26年間のうち20年間が鉄道高架化の現場
――淡路駅の高架化工事は長いんですか?
松下さん ええ、工事が始まった2008年からいます。12年間ずっとですね。
――それは長い。ライフワークみたいですね(笑)。
松下さん もう私の集大成ですよ。開通するころには定年間近なので(笑)。
――大林組ではこれまでどのような仕事を?
松下さん 私は大林組に入って26年目です。そのうち20年間、鉄道の高架化の工事に携わってきました。鉄道の高架化工事は今回で3回目です。最初が京成電鉄の京成本線船橋駅の高架化で、次が南海本線高石駅。その後、今の現場に配属になりました。
直径3mの基礎杭を48m掘る
――今の現場は、過去の高架化工事と比べてどうですか?
松下さん 今回の現場は2層高架で、高さ30mですが、ここまでの規模の高架橋をつくるのは初めてです。高さに伴い、基礎杭や橋脚などのモノがすべてこれまでの高架橋より巨大なんです。都市部ではまずありえない大きな杭です。橋脚の太さも、2m以上あり、通常の橋脚の2倍近くあります。
基礎杭は、場所によっては直径3mの杭を50m近くも掘っています。通常の鉄道高架橋の場合は直径1.5m〜2mぐらいで、深さは25m程度です。

高架橋工事が進む大林組・ハンシン建設JVの現場
――高さがあると、やはり大変なんですね。
松下さん われわれの工区には、京都線と千里線が平行交差するラーメン高架橋があって、そこは最も荷重のかかるところなんです。特にこのラーメン高架橋の基礎杭は、ヤードが狭隘な中、営業線の直近で直径3m、深さ50mのモノを施工したので、いろいろ大変でした。
そのような施工条件だと、機械や工法の選定が問題になってきます。パワーのない機械だと掘りきれません。営業線のキワで掘るので、孔壁が万が一崩壊してしまうと、最悪は電車脱線につながります。安全で品質良く施工できる方法を考える必要がありました。そのような理由で今回、オールケーシング工法を使いました。
ほかにコンクリート一つとっても躯体が大きいので、ひび割れの問題が出てきます。設計の段階で高強度コンクリートが適用されているのですが、温度応力解析をしながら、ヒビ割れに強いコンクリートにするため、いろいろ工夫しています。
――工夫と言いますと?
松下さん 大林組の研究所に協力を依頼して、低熱セメントや膨張剤などを加えることで、温度ひび割れに対抗できるようにしました。これが品質上の工夫になります。通常の土木構造物のコンクリート強度は30N/mm2程度が多いのですが、駅部のコンクリートは約50N/mm2の設計になっています。
苦情が多い時こそ住民目線で頻繁にご自宅に顔を出す、これ以上の対策は有りません。目先の利益・工期に囚われる事なく、長い目で対策を行い、安全第一で竣工迄頑張って下さい。