「新幹線によって地域がどう変わるか」が大切
――四国新幹線整備に関するこれまでの取り組みについて教えてください。
千葉会長 われわれの活動が本格化したのは、平成26年4月、四経連および四国4県、JR四国が中心となって実施した「四国の新幹線の整備効果等についての基礎調査」が公表されてからです。
私は、この調査の1年後の平成27年6月に四経連会長に就任しましたが、その調査内容を聞くまでは「基本計画における紀淡・豊予両海峡を渡る壮大かつ莫大な資金を要する計画は、国家財政が厳しい中で、できるはずがない」と考えていました。
しかし、この計画が、岡山から瀬戸大橋を渡り、四国の4県都を結ぶ新幹線を整備するというもので、「B/C(費用対効果)が1を超える」との説明を聞き、これであれば「可能性は十分ある」と考え方を変え、四経連会長就任後は四経連の活動の中心に据えて取り組んできました。
こうした中、四国の思いを一つにまとめ、四国の総意として「オール四国」で訴えかけてゆくことが何より重要であると考え、2017年(平成29年)7月、官民46団体で構成する「四国新幹線整備促進期成会」を設立し、私が会長に就任しました。
今日までの間、東京での3度の決起大会や再三にわたる国への要望活動、四国各地でのシンポジウムによる機運醸成、四国新幹線の起点となる岡山県への協力要請などに取り組んできました。
新幹線が実現したからといって、それだけで四国の活性化が図れるわけではありません。北陸などの成功例を見れば、新幹線開業まで様々な努力がなされていることがわかります。「新幹線を使って地域をどう変えていくか」ということを地域の皆さんが真剣に考えることが、四国新幹線を実現するためにはとても大切だと考えています。
こうした問題認識から一昨年6月には四国の4地銀のシンクタンクとの協働により、「新幹線を活かした四国の地域づくりビジョン調査」を取りまとめ、四国新幹線によって期待される波及効果や、地域づくりの基本戦略を提案してきました。今後は新幹線をいかに地域づくりに活かしていくのか、各地域で創意工夫を今から始めていかなければならないと考えているところです。
第一ステップが「瀬戸大橋ルート」、第二ステップで「紀淡海峡ルート」
――徳島県は「紀淡海峡ルート」を要望していますが、「オール四国」体制は盤石でしょうか?
千葉会長 徳島は、地理的にも歴史的にも関西地域と深いつながりがあります。現在、大鳴門橋、明石海峡大橋により、阪神地域までは車でわずか1~2時間程度でアクセスできますから、徳島の方たちにとっては、3時間も4時間もかかる四国の街より、関西がより身近なんです。
徳島の方たちが、「四国新幹線をつくるなら、是非とも紀淡海峡をわたる基本計画路線でやってもらいたい」、「岡山ルートでは徳島には何のメリットもない」とおっしゃるのは、理解できないわけではありませんし、期成会として否定するつもりもありません。
むしろ、長期的・国家的な観点に立てば、基本計画の「大阪~徳島~松山~大分」というルートは、インバウンドの四国への呼び込みやリダンダンシーの確保など大きな効果が期待できます。
しかし、いかんせん海峡部の工事費は巨額になります。明石海峡大橋は道路専用橋ですし、大鳴門橋は鉄道部分の空間はあっても、それに耐えられる構造にするには大工事が必要です。このため、費用対効果は大きく劣り、国の理解を得るのは極めて難しい。また、関西の関係自治体から地元負担の理解を得るのも同様に困難でしょう。
期成会としては、まず第一ステップとして瀬戸大橋ルートを実現させ、そのあと、国としての必要性が認められた段階で第二ステップとして海峡部に進めればと考えています。
――新幹線実現には岡山県の理解も不可欠です。
千葉会長 確かに、四国新幹線は岡山を起点となる岡山県の皆様のご理解をいただくことは、大きな課題です。
一昨年7月初めに4県知事や四国の国会議員とともに伊原木知事を訪問した際、伊原木知事から「法定調査の実施については協力していきましょう」というお話をいただきましたが、一方で、岡山にとってどのような効果があるのか、費用負担や並行在来線となる瀬戸大橋線の存続に対する懸念などが示されました。
中長期的な観点に立てば、四国新幹線は岡山の発展にとって大きな効果をもたらすと考えており、様々な機会をとらえて、理解をいただくよう努力していきたいと考えています。
四国新幹線誘致では「単線を含めても良いから!」と聞いたことがあります。
従来の時速300km超えのような「超高速を追求する新幹線」を求めるとしたら私も新幹線に否定的なままでした。地方路線の場合は開業後の維持管理費も見据えないといけないからです。
ですが単線も採り入れた誘致活動を聞いて四国新幹線に肯定的な気持ちが芽生えました。
ルートを自分なりに想定しましたが、四国新幹線内の単線割合はおよそ4割前後が適切だと感じました。
あえて単線を含めて建設すれば、高速道路の4車線化のように、後から完全複線にする事業を出来る可能性を残せます。つまり、建設需要を世代間で万遍なく配分でき、建設業も継続的に続けられる意味で希望をもちやすくなると思います。(ただし、建設業的な意味で欲をかいて単線割合を増やそうとしてはいけません。新幹線が「機能不全」を起こしやすくなり新幹線への評価が下がり建設工事需要自体なくなる恐れを高めるからです)
建設業的には、適切な単線割合をする前提で単線含めた新幹線整備を提言すると良いでしょう。
●単線を含めるので安全性の観点
●建設費だけでなく開業後の維持管理費や運行管理の難易度を下げる
以上の観点から
四国新幹線など新たに造られてほしい新幹線の最高速度はあえて「控えめ」にするのがよいと考えました。目安速度は時速240km~200kmくらいです。
「長距離」は地方空港を途中駅に組み込み、遠距離を得意とする航空と連携・棲み分けする。(新幹線と地方航空を組み合わせ地方同士の経済交流を促せば新幹線も航空も有益です。)
最高速度をあえて控えめにする前提だと 「曲線のきつさ」もきつくして良いのではと考えました。今造られている新幹線の曲線半径は原則4000m以上と聞きましたが、東海道新幹線は原則半径2500m以上とのこと。東海道新幹線並みの曲線半径にするとしたら用地買収の労力・費用も含めどれくらい建設費などを抑えられるでしょうか。
新幹線で時速300kmを超える超高速が必要なのは東京から直接伸びる路線・区間で長距離になりがちな東北新幹線(+青函トンネル区間除く北海道新幹線札幌まで)と山陽新幹線、(リニアですが)中央新幹線 くらいだと思います。他の路線は空港経由を通じた地方航空との連携も図るのがより適切と考えます。