新幹線は”あって当たり前”の交通インフラ
――そもそも、なぜ四国新幹線が必要なのでしょうか?
千葉会長 全国で新幹線の整備が進む中、もはや新幹線は決して特別なものでなく、高速道路のようにあって当たり前の基礎的な交通インフラとなってきています。こうした状況のなか、四国は全国で唯一、新幹線の具体的な整備計画がない地域として残されました。
2037年にはリニア中央新幹線が大阪まで開通する時代になります。日本は「リニアのある地域」「新幹線のある地域」「リニアも新幹線もない地域」と交通格差がさらに広がります。このままでは四国は、交通利便性の点で他地域に大きく劣後することになり、四国創生に向けての地域づくりを進めるあらゆる活動にとって、大きなハンデとなります。
とくに、人口減少対策が大きな課題である四国では、他地域にも増して、交流人口の拡大、企業のビジネス環境の向上、若者の定着、四国への移住促進などが重要ですが、そうした活動の基盤として、全国の新幹線ネットワークと結ぶ四国への新幹線導入が不可欠であると考えています。
また、新幹線は災害に強いインフラであることが東日本大震災や西日本豪雨災害で証明されています。南海トラフ地震の発生が懸念される四国にとっては、災害に強い地域づくりの観点からも、是非とも早期の新幹線の整備が必要です。
四国は、鉄道沿線に10万人規模の都市が連なり、新幹線の特性を活かしやすい地域であり、沿線の人口集積は北陸や東北・北海道に劣っていません。「なぜ四国には、新幹線が必要なのか」との問いには、むしろ「なぜ四国には新幹線がないのか」と言いたいくらいです。
さらに言うと、四国での新幹線の実現は、単に四国のためだけでなく、西日本の活性化に大きく寄与すると考えています。2037年にリニア新幹線、北陸新幹線が新大阪でつながり、新大阪駅は「地方創生回廊中央駅」へと生まれ変わります。
大阪を中心に、北陸、中国、九州そして四国が繋がれば、西日本の広域経済圏、文化圏は首都圏と匹敵するものになり、東京一極集中の是正、国土全体の一段の有効活用にも大きく寄与するものと考えています。
新幹線をJR四国の経営の新たな柱に
――JR四国は厳しい経営が続いています。
千葉会長 JR四国は、人口減少や高速道路の着実な延伸といった環境下で、経営安定基金運用益の大幅減少という国鉄スキームなどの機能不全により、経営自立が見通せないでいます。
令和2年度末には、国による支援策が期限切れを迎える中、小手先の経営改善策や支援策の継続だけでは、JR四国の経営自立はいつまでたっても実現できません。新幹線の整備を「JR四国の抜本的経営自立策」の柱として位置づけることが重要です。
四国4県や経済界などが一堂に会した「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会Ⅱ」には、私も委員の一人として参加していますが、昨年10月の中間整理において、新幹線を四国が目指すべき「公共交通ネットワークの骨格」と位置付けたところです。新幹線なしに、四国の公共交通を守ることが極めて難しいことは、この懇談会で公表されたJR四国の路線別の営業係数(瀬戸大橋線以外は全て赤字)が物語っています。
最近「MaaS」という概念がもてはやされていますが、公共交通ネットワークなしにMaasは意味をなしません。単にJR四国の経営存続の問題ではなく、四国の公共交通を維持する意味からも新幹線は不可欠であると考えています。
四国新幹線誘致では「単線を含めても良いから!」と聞いたことがあります。
従来の時速300km超えのような「超高速を追求する新幹線」を求めるとしたら私も新幹線に否定的なままでした。地方路線の場合は開業後の維持管理費も見据えないといけないからです。
ですが単線も採り入れた誘致活動を聞いて四国新幹線に肯定的な気持ちが芽生えました。
ルートを自分なりに想定しましたが、四国新幹線内の単線割合はおよそ4割前後が適切だと感じました。
あえて単線を含めて建設すれば、高速道路の4車線化のように、後から完全複線にする事業を出来る可能性を残せます。つまり、建設需要を世代間で万遍なく配分でき、建設業も継続的に続けられる意味で希望をもちやすくなると思います。(ただし、建設業的な意味で欲をかいて単線割合を増やそうとしてはいけません。新幹線が「機能不全」を起こしやすくなり新幹線への評価が下がり建設工事需要自体なくなる恐れを高めるからです)
建設業的には、適切な単線割合をする前提で単線含めた新幹線整備を提言すると良いでしょう。
●単線を含めるので安全性の観点
●建設費だけでなく開業後の維持管理費や運行管理の難易度を下げる
以上の観点から
四国新幹線など新たに造られてほしい新幹線の最高速度はあえて「控えめ」にするのがよいと考えました。目安速度は時速240km~200kmくらいです。
「長距離」は地方空港を途中駅に組み込み、遠距離を得意とする航空と連携・棲み分けする。(新幹線と地方航空を組み合わせ地方同士の経済交流を促せば新幹線も航空も有益です。)
最高速度をあえて控えめにする前提だと 「曲線のきつさ」もきつくして良いのではと考えました。今造られている新幹線の曲線半径は原則4000m以上と聞きましたが、東海道新幹線は原則半径2500m以上とのこと。東海道新幹線並みの曲線半径にするとしたら用地買収の労力・費用も含めどれくらい建設費などを抑えられるでしょうか。
新幹線で時速300kmを超える超高速が必要なのは東京から直接伸びる路線・区間で長距離になりがちな東北新幹線(+青函トンネル区間除く北海道新幹線札幌まで)と山陽新幹線、(リニアですが)中央新幹線 くらいだと思います。他の路線は空港経由を通じた地方航空との連携も図るのがより適切と考えます。