「財政均衡の外側で考える」のもアイデアの一つ
――新幹線整備の最大のネックは財源だと思いますが。
千葉会長 国の財政状況が厳しい中にあって、財源確保は大きな課題だと承知しています。新幹線整備にあたっては、国が2/3を負担することとなっていますが、現在の国の新幹線建設予算(約800億円)は公共事業費6兆円の1%程度、道路予算の1/20であり、このままでは何年先になるかわかりません。また、地方負担の重さが整備を阻害する問題となって顕在化しつつあります。
新幹線建設予算の増額については、他地域の経済団体とも協力して、新幹線予算全体の増額を強く要望していますが、「思い切った発想の転換が必要ではないか?」と考えています。
西田昌司・参議院議員は「建設国債30兆円を発行して、基本計画路線をすべて国費で整備せよ」、「新型コロナウイルス終息後の強力な経済対策にもなる」と提唱しておられますが、長期間にわたって便益を発生するインフラ整備を「財政均衡の外側で考える」というのは一つのアイデアだと思います。
また、限られた予算の中で早期事業化を図る手段としては、単線整備による大幅なコストダウンも有力と考えられます。需要に見合った輸送力を確保できれば、現実的な選択であり、国による調査も行われているところです。
政治を動かすのは「地元の声」
――機運の醸成については、いかがですか?
千葉会長 新幹線は、まさに政治問題と言えますが、政治を動かすのは「地元の声」です。当期成会では、毎年四国各地で大規模なシンポジウムの開催や啓発ポスターやバッジの製作、絵画コンクールの開催など子供たちを対象としたイベントの開催など行ってきましたが、地元の盛り上がりが期待するほど高まっていないのは事実であり、大きな課題です。
このため、いくつかのアンケートを実施したところ、基本的な認識において多くの方たちが誤解している点があることがわかりました。
例えば、
- 赤字のJR四国に新幹線が作れるはずがない(新幹線はJRがつくるもの)。
- 新幹線よりも社会福祉や教育を充実させてもらいたい。
- 新幹線よりも在来線の複線化や電化をしてもらいたい。
- 高速道路があれば新幹線はいらない。
といった誤解や思い込みが根強く存在することが確認されました。
こういった、誤解や思い込みに対しては、対話の場を増やしていくしかありません。新型コロナウイルスの感染拡大のなかでは難しいですが、終息すれば、大規模なシンポジウムと並行して中・小規模の集まりに対して、積極的な情報発信を続けていく必要を感じています。
また、経済界や行政から既存メディアを通じてのアクセスが難しい若年層に対しては、今年度SNSを通じた情報発信と意見交換を行う計画をしています。SNSであれば、新型コロナウイルスの感染拡大といった状況下でも理解促進活動を継続できるものと期待しています。
――事業啓発のため、絵画コンクールを実施されていますね。
千葉会長 四国新幹線は「未来への投資」です。実現した四国新幹線を使うのは私たち高齢者ではなく、今の子供たちになるでしょう。その子供たちに私たちの活動を知ってもらうために、絵画コンクールを開催しています。このアイデアは山本有二衆議院議員のご発案によるものなんですよ。JR四国も苦しい経営状況の下で精いっぱい協力してくれています。
新型コロナウイルスの感染拡大で、広報活動が十分行えなかったこともあり、どれだけ応募してくれるか不安だったのですが、3月末の締め切りにはたくさんの作品が届き、ほっとしています。これから審査を行い、できれば夏休みに西条市の「十河信二記念館」で表彰式を行いたいと思っています。
四国新幹線誘致では「単線を含めても良いから!」と聞いたことがあります。
従来の時速300km超えのような「超高速を追求する新幹線」を求めるとしたら私も新幹線に否定的なままでした。地方路線の場合は開業後の維持管理費も見据えないといけないからです。
ですが単線も採り入れた誘致活動を聞いて四国新幹線に肯定的な気持ちが芽生えました。
ルートを自分なりに想定しましたが、四国新幹線内の単線割合はおよそ4割前後が適切だと感じました。
あえて単線を含めて建設すれば、高速道路の4車線化のように、後から完全複線にする事業を出来る可能性を残せます。つまり、建設需要を世代間で万遍なく配分でき、建設業も継続的に続けられる意味で希望をもちやすくなると思います。(ただし、建設業的な意味で欲をかいて単線割合を増やそうとしてはいけません。新幹線が「機能不全」を起こしやすくなり新幹線への評価が下がり建設工事需要自体なくなる恐れを高めるからです)
建設業的には、適切な単線割合をする前提で単線含めた新幹線整備を提言すると良いでしょう。
●単線を含めるので安全性の観点
●建設費だけでなく開業後の維持管理費や運行管理の難易度を下げる
以上の観点から
四国新幹線など新たに造られてほしい新幹線の最高速度はあえて「控えめ」にするのがよいと考えました。目安速度は時速240km~200kmくらいです。
「長距離」は地方空港を途中駅に組み込み、遠距離を得意とする航空と連携・棲み分けする。(新幹線と地方航空を組み合わせ地方同士の経済交流を促せば新幹線も航空も有益です。)
最高速度をあえて控えめにする前提だと 「曲線のきつさ」もきつくして良いのではと考えました。今造られている新幹線の曲線半径は原則4000m以上と聞きましたが、東海道新幹線は原則半径2500m以上とのこと。東海道新幹線並みの曲線半径にするとしたら用地買収の労力・費用も含めどれくらい建設費などを抑えられるでしょうか。
新幹線で時速300kmを超える超高速が必要なのは東京から直接伸びる路線・区間で長距離になりがちな東北新幹線(+青函トンネル区間除く北海道新幹線札幌まで)と山陽新幹線、(リニアですが)中央新幹線 くらいだと思います。他の路線は空港経由を通じた地方航空との連携も図るのがより適切と考えます。