オリジナルの接合金物と耐火外壁で、機能と施工性を両立
――他社のCLTとの違いは?
大久保 技術的な一番の違いは、オリジナルの接合金物を独自開発し、接合部の強い強度と変形性能を実現したことにより、地震に強い構造である点です。
また、CLTは4階建ての規模になると公に規格化された金物がなく、各社で独自開発する必要があります。その際、当社では現場の省力化と品質の安定化に焦点を当て、開発を行いました。
また、職人の腕により、施工の品質が左右されては困りますので、誰がやっても同じ強度を維持できるように、工場ではCLTにオリジナル金物一式を工場で組み立て、ピンを差し込むだけの「ドリフトピン仕様」とすることで、現場での作業時間を大幅に短縮※できるようになっています(※海外で使用されている従来の金物を用いた工法と比較した場合)。

CLT接合部のオリジナル金物
デザイン面では、「Forterb(フォルターブ)」は木目を活かしています。耐火外壁は被覆をしなければならないので、手間が掛かります。そこでなるべく凸凹を無くしたキュービックなデザインを採用し、一方でガラス手すりなどで縦と横のデザインを強調することで、外観の自由な表情と木のぬくもりを演出しています。
また、木造とはいえマンションですから、エントランスにはこだわり、高級感のある仕上げにしています。

高級感のあるエントランス
――耐火性は?
大久保 4階建て以上は1時間耐火構造が必要で、躯体を耐火被覆材で覆う必要があります。そのため、屋内側にはプラスターボードを二重張りとし、屋外側は繊維混入セメント板を二重張りとすることで、火災が発生してもこの被覆により、木部が炭化して強度が失われる現象を防ぐことができます。この仕様で個別に大臣認定を取得しました。
この耐火外壁の組み合わせは工場で施工することが可能になり、現場の作業削減が実現しています。接合金物と耐火外壁の組み合わせが、国内では大きく突出した技術であり、工期短縮や現場の簡易施工に貢献していると自負しています。建て方は早く、ツーバイフォー工法と同じスピードで進みます。
CLTなら施工も容易に
――施工面での具体的な特徴は?
大久保 ツーバイフォー工法と比較すると、ピンや釘を打つ量は圧倒的に少なく、外壁の固定化は早く進みます。
工場で耐火外壁をパネル化し、現場に運搬して組み立てます。ただし、道路側からの施工となるため、トラックと揚重機が必要です。
海外のCLTは高さが3mクラス、長さは12m規模です。それをレッカー2台で吊るため問題ありませんが、日本では道路交通法上、こうした大きいものは運べないので、パネルの大きさは海外よりも小さくなります。しかし、3.6mのCLTでも重さは1t近くになりますから、揚重機での吊り上げ計画は非常に難しい。
組立の習熟度については、およそ1回程度行えば当社の協力会社は十分に要領を得られるレベルです。1人知識のある番頭役の技能者が指示を出すことができれば、あとは経験の浅い作業者でも十分に施工が可能です。
――現場で施工した感想は。
大久保 ツーバイフォー工法の延長感覚で施工すると大変ですね。パネルの重量はありますし、スピードは変わらないにせよ、慣れない金物も使いこなさなければなりません。初めての工法での施工で生みの苦しみや抵抗感があるのは事実です。ですが、普及を目指すにはこの課題を乗り越えていかなければなりません。
ただし、比較対象はツーバイフォー造ではなく、RC造です。例えば、同規模のRC造で施工するには、躯体工事で多くの職人と多様な職種が必要になりますが、CLTであれば圧倒的に少ない人数で、かつ大工のみで施工できるので、優位性があると思います。