CLT工法の技術的な弱点は「遮音性」
――商品化までの検証は?
大久保 2019年の春に、独自に開発したCLT工法での実大棟3階建てを建設し、施工性に加えて入居後の居住性、たとえば遮音性や断熱性などの基本性能も検証しています。また、「暖かいか涼しいかなどは、自分で体感してみるべき」という社命を受けて、実際に私が住みながら検証しています。
――CLT工法の優位性や、逆に欠点は判明しましたか?
大久保 CLTは密実な木の塊です。コンクリートの1/13、鉄の1/440の熱伝導率であるため、断熱性に優れ、夏の夜も寝苦しくなく、冬は足元から暖かさを感じることができます。通常のRC造であれば当社の場合、150mmの壁に25mmのウレタンを吹き付けますが、CLT自体に断熱性が確保されているわけです。
一方で遮音性ですが、これがCLT床を共同住宅で採用する場合の課題ととらえています。210mm厚のCLTを床に用いた場合でも、重量音に対して太鼓のように響いてしまうため、海外では、砂を100mm以上敷いてタイルを張ったりするなどの工夫がされています。
そこで当社では、これまで当社が培ってきた在来工法での遮音技術を応用し、床にはCLTを採用せずに在来の梁で構成することとしました。集成材の梁+床合板+当社オリジナルの遮音材を用いることにより遮音性を担保しています。
地盤によってはRC造とコストが逆転する
――RC造と比較した際のコストは?
大久保 単純にRC造と比較すると、まだ少しCLT造のほうが高いです。それでは、なぜ商品化したかと言えば、地盤の条件によってはコストが逆転するからです。
CLTの建物荷重はRC造と比較して60%ほどで、建物下の杭設計が圧倒的に有利になります。場所にもよりますが、RC造で建築すると50mの杭を打たなければならない地盤でも、CLTであればベタ基礎も可能です。
――現在、木造が8割、RC造が2割ですが、このシェアが変わる可能性は?
大久保 現状のシェアに加え、新たにCLTの需要を1割、創造する考えです。ですから、本当は11割としたい気持ちがあります。当社にとって、CLT工法に注力するのは、新たな需要の創造が目的です。
RC造に比べCLT工法を取り入れれば荷重が少ない分、地盤に対して有利になるため、これまで他社がRC造では建てられなかったところに、当社のCLT工法で新たな提案の機会、さらには市場を創っていきたいと考えています。
――施工性や居住性以外に、CLT工法を採用すべきアドバンテージは?
大久保 解体にあります。現在、相続対策で既存の建物を解体し、新築マンションを建築する動きもありますが、一般的なRC造のマンションを解体すると、建物の大きさなど条件にもよりますがおおよそ1億円かかります。かなり大きな負担となりますので、子や孫に安心して相続してもらうためには、解体の点でもRC造よりも木造のほうがライフサイクルコストを考えると有利です。