「流域治水」はハード・ソフト一体で多層的に推進
――防災に強いまちづくりにおいて、河川整備はどのような役割を果たしますか?
栗原 「流域治水」は、① 氾濫をできるだけ防ぐ、減らす対策、② 被害対象を減少させるための対策、③ 被害の軽減、早期復旧・復興のための対策を3本の柱とし、ハード・ソフト一体で多層的に進めることで、水害に対し強靱なまちづくりを行っていくものです。
「流域治水」の実現を図るため、2021年2月2日に「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案」(流域治水関連法案)が閣議決定され、4月28日に成立しました。河川や水防、まちづくりに関する計9本の法改正が行われたことを受け、流域治水の推進、すなわち水害に強いまちづくりを、これまで以上に実現していく環境が整いつつあると考えております。
そのような中で、河川整備は①の氾濫をできるだけ防ぐ、減らす対策に位置づけられるものです。河川整備の目的は、洪水時の河川水位を下げて、下流まで安全に流下させることです。河川整備を進め水位を下げることは、川の水が堤内地へ溢れ出す外水氾濫のリスクを下げるだけでなく、川へ吐ききれない水が街中に貯まってしまう内水氾濫のリスクを下げ、浸水範囲・時間を縮減することに繋がります。
氾濫をできるだけ防ぐ、減らす対策の単なる一取組みに止まらず、②、③も含めた全ての対策に繋がっていく根幹となる対策であると考えますので、整備局として、確実に整備を進めていきたいと考えております。
河川とまちを活性化する「かわまちづくり支援制度」
――地域住民からの意見は?
栗原 昨今の大規模な災害が頻発化している状況を受け、流域の地方自治体も含め、地域住民の方も防災意識や治水に対する期待が今まで以上に増していると感じます。また、東北の場合は農地が特に多いですから、土地改良区の皆様からの協力もいただいています。
防災以外にも、地域活性化に向けたご意見を多々いただきます。「かわまちづくり支援制度」では河川とそれに繋がるまちを活性化するため、市町村、民間事業者及び地元住民の協力をいだたき、河川空間とまち空間が融合した良好な空間をつくっています。旧北上川の河口部(石巻地区)や、名取市の閖上地区などの好事例があります。また、ダムを地域の観光資源とし、地域活性化に繋げるダムツーリズムも、地域の皆様の声をもとに進めています。
これから、地域の特色を踏まえた「流域治水プロジェクト」を推進していくためには、地域住民の皆様のご意見、ご協力が不可欠です。人命と生業を守っていくとともに、地域の資源を有効に活用し、地域を元気にしていくという視点で、取組みを進めていきたいと思います。
建設業と行政は「一心同体」
――最後に、施工に当たる建設業界については。
栗原 我々の仕事は建設業界の方々がいて初めて成り立ちます。行政は、計画を立案し、対策を練り上げますが、形にするにあたって、建設業はなくてはならない最重要のパートナーです。「流域治水」を通じ、東北地方としてこれからの気候変動に立ち向かって行くためにも、建設業の皆様と我々行政は「一心同体」と考えます。その中で、次世代を担う人材の育成は、共通かつ喫緊の課題と考えます。
少子高齢化が進む東北地方で、災害時の迅速な対応そしてインフラの維持管理など、「地域の守り手」である建設業の担い手確保対策を東北全体へと拡げることが必要であり、そのためには、働き方改革をしっかりと進め、魅力ある建設業を官民連携しながら、つくりあげることが重要になります。
そこで東北地方整備局、県・仙台市、建設業団体が連携して取り組む「東北復興働き方・人づくり改革プロジェクト」を、東北管内の全市町村(226市町村)へ拡大し、「強い東北」の実現に向け、取組みを浸透・定着化を目指し、働き方改革の推進、生産性向上の推進、担い手の育成・確保に取り組んでいます。
今、i-Construction(アイ・コンストラクション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に展開しています。今後、一層このような取り組みを進め、生産性を高めていくことが重要ですし、災害が多発し、多くの住民の方々が災害を身近に感じるようになっているということは、見方を変えれば、私たちの存在意義を世の中にもっと知っていただくチャンスであるとも考えます。
私が所属する河川部では、昨年度から、業界の皆様の働き方改革や人材育成の取組みについて生の声をお聞かせいただくため、勉強会を始めたところです。建設業の皆様の日々の取組みもよく勉強させていただきながら行政側も必要な取組みを一層進め、業界の皆様と一体となって、魅力ある建設業にしていくため、努力していきます。
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