コロナ後のパラダイムシフトで土木に求められること
谷口会長 コロナ後は大きなパラダイムシフトが起こります。自分ファーストではなく、各国との対立から協調へと向かい、自然を含む共生や、経済効率のみを優先するのではなく生活との調和が大切になっていきます。
さらに集中から分散への転換も視野に入れなければなりません。今回のパンデミックでは大都市の脆弱性が分かりました。首都直下地震、南海トラフ地震が近いうちに発生すると予想されていますが、大都市集中型からの転換をはかり、リスク分散型の国土形成、国土強靭化による地方創生が重要になっていきます。
また、経済を回していく視点も肝要です。いざとなる時の内部留保だけではなく、循環型の経済としていくためには、インフラ投資への転換が求められます。
自然や文化とインフラの「令和」を目指す
谷口会長 令和の意味は「Beautiful Harmony」。つまり「美しい調和」です。
地方が持っている自然豊かな歴史・文化を尊重するまちづくりを目指す中で、国の全体像や先ほど申しました国土のリスク分散との「令和」を考えていく視点を持つべきです。そこでインフラの計画的・効率的・先行的な整備保全が肝要となります。
一方、財源は無限にあるわけではありませんので、与えられた財源・予算の中で、大小軽重を判断し、取捨選択したプロジェクトと、財源の裏付けと投資額を明示したインフラのビッグ・ピクチャーを提言したいと思っております。
日本のGDPは500兆円台半ばで推移しています。現在、日本の名目GDPのランキングは世界第3位ですが、この30年間、経済成長していないため、今後インドやインドネシアなどの新興国家に抜かれることが予想されています。そこで、生活経済社会の高度化、GDPに見合ったインフラ整備や保全がポイントとなりますが、これは優先順位を示しつつ展開すべきです。
ただし、民需の回復までは時間がかかり、需要喚起と循環により、成長軌道に乗せるには、金融政策頼みではなく積極的な財政政策が大切です。一方、財政健全化やプライマリーバランスを長期的にはかることも忘れてはなりません。
私は、防災・減災や維持管理更新については国民の理解が進んでいると思います。しかし、それだけでは”守り”になりがちです。
そのため、将来や未来に希望の持てるシンボル的なプロジェクトを盛り込みながら、額ありきでなく、どのくらいの規模が必要であるかを提示したいと考えています。