大阪・関西万博日本館でCLTを活用
同連絡会議では、議長である岡田直樹内閣官房副長官が「今後のプロジェクトとしては、大阪・関西万博日本館でCLTの活用を進めるための取組みが関係省庁の連携のもとで進められており、こうしたモデル的なプロジェクトを積極的に推進していただきたい」と語っている。また、和泉洋人内閣総理大臣補佐官からは「CLTパネル等の寸法等の規格化の推進、住宅性能表示制度におけるCLT向けの基準の整備、設計者への一元的サポート体制の整備等が関係各省庁で進められている。今後ともしっかり取り組んでいってほしい」という積極的な意見があった。
さらに、会議では2021~2025年度の普及に関するロードマップも確認し、政府内で共有した。「モデル的なCLT建築物等の整備の促進」、「コスト改善」、「設計・施工等をする担い手確保」等の課題も改めて浮かび上がっている。
特にコスト面では、製造施設の整備を急ぎ、年間50万m3のCLT生産体制をめざすほか、CLTパネル等の寸法等の規格化に向けた連携体制の構築、低コストの接合方法等の開発・普及により、CLT製品価格が7~8万円/m3となり、他工法と比べコスト面でのデメリットが解消されることを期待している。
各民間企業の挑戦的な取組み
それでは現在、民間企業はどのような取組みを展開しているのか。木造の中高層建築を後押しするため、技術的にはCLTを構造物に採用する動きも出始めている。
たとえば、三菱地所の「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」は昨年10月1日に、札幌市・中央区に開業、国内初の木造とRC造を組み合わせた高層ホテルとして注目を浴びた。
構造躯体の木材使用量は約1,060m3(外装材等も含めると約1,200m3)となり、そのうち8割強が北海道産⽊材だ。CLTは床材に採用、構造躯体に使用する木材量は国内最大規模となり、建物全体をRC造とした場合と比べ約1,380tのCO2発生を抑制している。ちなみに、国土交通省のCLT工法等先導的な設計・施工技術が導入される建築物の木造化プロジェクトに対する支援である「令和元年度 第2回募集 サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択されている。
さらに、三菱地所は、建築用木材の製造、施工、販売といった、川上から川下までの統合型ビジネスモデルを構築する新会社・MEC Industry株式会社を設立している。将来的には直交集成板・CLTとS造・RC造などの複合化により、中層から高層建築化への展開を進めていくという。
野村不動産株式会社は、オフィスビル「野村不動産大手町北ビル」を2021年6月21日に竣工しているが、基準階専有部の一部に国産材の CLTを採用、木材を用いることで、比較的簡易に床解体ができるため、コミュニケーション向上を目的とした貸室内屋内階段や吹抜けの設置がしやすいメリットがある。
三井ホーム株式会社は、「MOCXION(モクシオン)」という新ブランドのもとで「木造マンション」という新たなカテゴリーを創出した。高強度の耐力壁「MOCX wall(モクスウォール)」を開発し、木造マンション「MOCXION INAGI(モクシオン稲城)」に導入しているが、こちらも同先導事業に採択された。
また、大林組は、横浜市・中区に世界的にも類を見ない、構造部材(柱・梁・床・壁)すべてを木材とした、高層純木造耐火建築物の建設中だが、こちらも同先導事業に選定されている。
こうした動きは、大手企業だけではなく、地域工務店でも始まっている。千葉県鎌ケ谷市に本社を置く、株式会社東洋ハウジングは、CLTパネル工法による14層(1階RC造)の15階建て店舗・事務所併用の高層共同住宅を建設する「東洋木のまちプロジェクト(高層棟)」を始動した。

CLTを構造体として活用した民間の中高層建築物の事例 / 内閣府
実は、CLTの民間プロジェクトは書ききれないほど多数ある。どこも相当な意欲をもって取り組んでいるのだ。