自分の人生を賭けるなら、土木かな
――長田さん、横浜国立大学でも土木を学んでいたのですか?
長田さん そうです。コンクリートの研究室にいました。
――もともと土木(コンクリート)に興味があったのですか?
長田さん 最初から土木(コンクリート)に興味があったわけではありません。むしろ、「土木(コンクリート)以外のことを学ぼう」と模索していました。ただ、学部時代の恩師といろいろとお話したり、本をススメられたりする中で、「自分の人生を賭けるなら、土木かな」と判断して、土木(コンクリート)に来たという感じです。
――本をススメられたんですね。
長田さん はい、自己啓発系の本をススメられました。最初はそれほど刺さらなかったのですが、後になって刺さるようになりました。恩師自身もスゴいアツい方でしたが、多少なりとも共感を覚えました。
もっと言うと、本当は、航空機のパイロットになりたいと思っていたんです。航空大学校に受かって、そちらに行こうと思っていたのですが、恩師に全力で引き止められました(笑)。恩師は東大のコンクリート研究室の出身だったこともあり、最終的にこちらの研究室に来ることにしました。
――それが石田研究室を選んだ理由ですか?
長田さん いえ、石田研究室を選んだ理由は別にありました。横国のころから東大の石田研究室、日本大学の岩城研究室と共同研究していたプロジェクトに携わっていたんです。それがとても強い舗装コンクリートです。100年間メンテナンスを必要としないコンクリートをつくるというプロジェクトだったのですが、これが成功すれば、自分が関わった研究成果は100年後も残ることになるということで、ボクの中でも、期待値の高い研究でした。この研究を続けたいと思ったときに、石田研究室の高橋先生にご相談させていただいたところ、石田研究室に入ることになりました。
女性が少ないなら、私が行くか(笑)
――塚田さん、土木を学ぼうと思ったきっかけはどのようなものでしたか?
塚田さん 大学を受けるときは、「とりあえず工学を学べる理科一類に行きたい」ぐらいしか考えていませんでした。大学で授業を受けているうちに、まちを歩いていると目に入るインフラについて学ぶのが「私に合っている」ということで、2年生のときに社会基盤学科を選びました。
――大学の授業がきっかけだったということですか。
塚田さん そうですね。土木の授業は、受けていて楽しかったですし、成績も良かったので(笑)、「けっこう自分に向いているのかな」と思ったのが、大きかったですね。土木という学問の存在に気付けたという点では、大学の授業に感謝しています。
――石田研究室を選んだ理由はなんだったのですか?
塚田さん それも大学の授業として、コンクリートを学んだのがきっかけでした。水セメント比を変えると流動性などが変わったり、養生条件によっても品質が変わったりとか、コンクリートをつくるだけでも、たくさんのパラメーターがあって、コンクリートってスゴく奥深いなと感じたからです。いい塩梅のコンクリートをつくるのは難しいことですが、それがおもしろそうだなと思って、石田研究室を選びました。
あと、コンクリート研究室は女性が少ないという情報を知ったのですが、「じゃあ、私が行くか」というのもありました(笑)。
DXを活用した、塩害に強いコンクリートの構造を研究
――Pakpoomさん、研究内容についてもうちょっと詳しく教えていただけますか?
Pakpoomさん 塩分浸透を抑える高耐久なコンクリートをつくるため、DXを活用して、コンクリート構造の最適化に関する研究をしています。高い性能を得るためには、コンクリートの構造自体が非常に重要になってくるからです。コンピュータ上での数値解析データをもとに、実験による性能評価を行いながら、より高効率なコンクリート構造のあり方を探っているところです。
――なぜその研究テーマを選んだのですか?
Pakpoomさん 石田先生からいくつかの研究テーマを提案されましたが、その中で、一番おもしろそうだったからです。
――実際にやってみておもしろいですか?
Pakpoomさん はい、おもしろいです。最新の技術、たとえば、マシンラーニングを使って、顕微鏡レベルの詳細な画像解析をしているのですが、そういうところに、土木技術を一歩前に進める画期的な研究だと感じるからです。
コンクリート床版の土砂化をシミュレート
――石井さん、研究内容について教えてください。
石井さん 床版コンクリートの土砂化に関する研究には、シミュレーション理論を構築する、それをもとにツールをつくる、そのツールを実務で使う、といったフェーズがあるのですが、私が携わっているのは、シミュレーションに基づき、いつ土砂化起きるかを予測して、その予測を高速道路会社の維持管理実務においてどう活かすかということです。
実際にあるいくつか橋梁のデータを提供していただいて、われわれのツールに当てはめてみて、うまくいくかどうか、調べたりしています。うまくいかない場合は、ツールを改善したりしています。
――なぜこの研究テーマを選んだのですか?
石井さん もともと実務に関係する研究をやりたいと思っていました。床版コンクリートの土砂化に関する研究は、理論がある程度確立され、ツールもできて、最後の実務に活かせるかどうかというフェーズに来ていたので、この研究を選びました。
――楽しいですか?
石井さん はい、楽しいです。私自身、コンクリートに関する研究を始めてまだ1年未満なので、シミュレーションの使い方など、理解が追いついていない部分はありますが。