フライアッシュと膨張剤をミックスし舗装コンクリートの検証
――長田さん、今はどのような研究をしているのですか?
長田さん とても強いコンクリートに関する研究というのは、すでにお話ししたところですが、なぜこの研究が必要かと言うと、耐久性の低いコンクリートでつくられたインフラは、定期的にメンテナンスが必要となり、コストもかさんでしまいます。インフラのライフサイクルコストを抑えるためには、とても強いコンクリートが必要になってきます。
とても強いコンクリートをつくるためには、主に2つの材料がキーになります。フライアッシュと膨張材です。これら2つの材料をミックスさせることで、高耐久なコンクリートができるかどうかを検証しているわけです。
東大、横国、日大の3つの大学による共同研究だと言いましたが、各大学ごとに役割が決まっています。東大は解析技術を用いて、100年後の舗装の状態を予測するという役割を担っています。試験施工などの実験は日本大学が担当しており、ボクも実験に参加しています。研究全体としては解析と実験を突き合わせながらやっていっていますが、解析だけにフォーカスできるのは、より深いところにフォーカスできるという意味で、ボク的には恵まれた研究環境だと感じています。
――学部時代とはまた違った研究なのですか?
長田さん ちょっと違っていて、学部時代はコンクリートのジョイント部の破損原因の分析に関する研究をしていました。
――アスファルト舗装ではなく、コンクリート舗装なのがユニークだと思います。
長田さん アスファルト舗装は施工しやすいというメリットがあり、施工後すぐに開放できるのもメリットです。一方で耐久性に劣るデメリットがあります。なにより、アスファルトの原料は原油なので、日本は輸入に頼らざるを得ないので、製造コストが変動しやすいところがあります。そういうこともあって、コンクリート舗装にフォーカスしているわけです。
CO2を吸収するコンクリートづくりに関する数値解析
――塚田さん、研究内容についてお願いします。
塚田さん 私が今進めている卒業研究は、「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)」という名称で呼ばれている技術で、二酸化炭素を吸い込む(吸収する)ことで固まる画期的なコンクリートに関する研究です。通常のセメントは、製造時に大量のCO2を出してしまいます。セメント産業のCO2排出を国に例えるならば、中国、アメリカに次いで世界第3位の環境汚染要因となっており、日本のセメント業界にとって大きな課題になっています。
CO2-SUICOMの特長は、セメントの使用量を通常のコンクリートの半分ぐらいまで減らしていることです。その代わりに、「γ-c2s(ガンマシーツーエス)」というCO2と反応して固まるという性質を持つ特殊な粉末を入れています。コンクリートをつくればつくるほど、地球からCO2を減らすことができるわけです。
この研究は、複数の企業、複数の大学が参加する10年間の長期プロジェクトになっていて、今年がプロジェクト初年度に当たります。なので、まだわかっていないことがかなり多いんです。このプロジェクトの中で、東大はCO2の吸収条件に関する数値解析を担っています。
私自身は、今のところ石田先生と二人三脚でやらせてもらっている感じなんですが、直近の目標としては、どういう条件であればCO2を最も固定できるのかについて、数値解析を用いて、自分でも実験しながら、一定の結論を出すことを目指しています。
――この研究テーマを選んだ理由はなんだったのですか?
塚田さん 研究テーマについて「悩んでいるんです」と石田先生に相談したら、提案していただきました。カーボンニュートラルは今一番アツい分野だし、プロジェクトとしても大きいし、「良い経験になりそう」ということで、選びました。
タイ政府のエンジニアとして働きたい
――Pakpoomさん、将来はどうなりたいですか?
Pakpoomさん タイに戻って、エンジニアとして政府で働きたいという希望を持っています。今、タイの道路はメンテナンスが必要な時期です。タイに戻ったら、100年、1000年大丈夫な良い道路をつくりたいです。
――日本のインフラ技術が優秀だとしても、そのままタイに移転するのは難しいと思いますが、いかがですか?
Pakpoomさん 私はうまくいくと思っています。なぜなら、日本とタイのインフラはほぼ同じだからです。最近は、高速道路整備について、JICAを介して、日本の企業など長期間の契約を結び、いろいろなコラボレーションしています。少なくとも、タイ国政府としては、日本とウィンウィン関係を築けると考えていると思います。
日本のインフラ技術を世界に輸出する仕事に携わりたい
――石井さん、今後の進路についてどうお考えですか?
石井さん とある商社への就職が内定していて、インフラ部門への配属を希望しています。いわゆる建設業界ではないのですが、日本のインフラに関する技術などを世界に輸出する仕事に携わっていきたいです。もともと海外で働きたいと思っていたので、国内外問わず仕事をしていきたいです。