「労働者死傷病報告」をめぐる葛藤
現場で怪我を追った人の休業が3日以内(4日未満)かどうかで、労働基準監督署への報告方法が変わってきます。
休業が3日以内(4日未満)であれば「労働者死傷病報告」を3ヶ月に1度、労働基準監督署に報告すれば済みますが、休業が4日以上になる場合は「労働者死傷病報告」を事故発生から「遅滞なく」提出しなければなりません。報告に行くときは当然、謝罪もセットになりますから、気持ちの良いものではありません。
労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)
1.事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第 23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
2.前項の場合において、休業の日数が4日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第24号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
さらに、この「遅滞なく」というのが曲者で、明らかに4日以上の休業となる場合は迷いなく提出できるのですが、休業期間が微妙な場合は出すべきか迷ってしまうのです。そういう場合は結局、「労災隠し」と疑われないように、労働基準監督署へ事故の報告だけをしに赴くこともあります。
しかし、いちいち事故が起こる度に、労働基準監督署へ報告と謝罪をしていると、「この現場は安全管理に問題があるんじゃないか?」と疑われて臨検の回数も増えるかも知れないので怖いです。
重大事故のとき、冷静でいられるか不安
もし重大な事故が発生した場合は、「労働者死傷病報告」だけでは済みません。
ある日、会社から突然「近くの現場で事故が起こったから応援に行ってくれ」という電話が来ました。その現場とは車で10分位の距離。現場に到着すると、すでに救急車が到着し、救急隊員が怪我人を搬送しようとしているところでした。
怪我人の顔を見て、私は立ちすくみました。倒れているのは私もよく知っている真面目な職人さんで、つい2日前にも私の現場で仕事をしていた方だったからです。他人の現場だったから、まだ冷静でいられましたが、もし自分の現場だったら、目の前が真っ白になって現場監督として冷静に対応できるか不安になったことがあります。