「パークアクシス北千束 MOCXION」は”オール木造カーボンゼロ”

施設事業本部 設計部設計グループチーフマネジャーの奈留隆善氏
――「MOCXION INAGI」の施工後、「MOCXION」も進化していったと思いますが。
奈留氏 「MOCXION INAGI」は、1階部分がRC造で上階4層が木造という混構造でしたが、「MOCXION四谷三丁目」「パークアクシス北千束 MOCXION」は、4層の総木造です。5層・6層の中層建物のオーダーも増えていますが、より木造のメリットが分かりやすい総木造にも注力しています。木造部分は断熱性能が高いため、1階部分にRC造を持たない分だけ、ZEH(エネルギー収支をゼロ以下にする家)の認証も取得しやすくなります。
「MOCXION四谷三丁目」では、一次エネルギー消費量を20%以上削減し、「ZEH-M Oriented」の認定を取得しています。加えて、木造の特徴である柔軟な設計と当社独自の技術による有効空間を確保したプランニング「m3設計」を実現し居住空間を広げることにより、経済性と快適な居住性に寄与しています。
「パークアクシス北千束 MOCXION」ではBELS 評価の「ZEH-M Ready」のみならず、三井不動産レジデンシャルの賃貸マンションとしては初となる国際的環境認証「LEED 認証」(米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する環境性能認証制度)の取得を予定しています。建築時のCO2排出量を約50%に削減し、入居中のCO2排出量を実質ゼロとした、オール木造カーボンゼロ賃貸マンションとして環境と共生するすまいを実現します。

「パークアクシス北千束 MOCXION」(完成予想図)
混構造はアンカー精度がポイント

施設事業本部施設建設事業部施工グループ「(仮称)キャンパスヴィレッジ生田」新築工事作業所長の中瀬周作氏
――施工する上では、アンカーボルトの精度が大きなポイントだと思います。
中瀬氏 当社は木造をメインとする会社ですが、混構造ではRC造と木造の接合部の納め方やその精度管理が重要になるため、RC造の精度はもちろん、接合部であるアンカーボルトの精度が非常に大事になります。
ツーバイフォー工法で国内最大級となる1階RC造・2~5階木造の5階建て特別養護老人ホーム「特別養護老人ホーム新田楽生苑」(東京都・足立区)を施工した際には、スラブ配筋後にアンカーボルトの正確な位置を基準墨から追うことが難しいため、自動追尾型のトータルステーションを利用し、スマートフォンやタブレット端末で操作しながら、位置を確認していきました。ただ、±5mmのアンカーボルトの精度を確保するためには、測量方法や固定方法、さらにはアンカーボルトの構成や定着の取り方について、今後さらなる改善が必要だと感じています。

「特別養護老人ホーム新田楽生苑」(東京都・足立区)
――「特別養護老人ホーム新田楽生苑」の施工で、難しかった点は?
中瀬氏 事前の配筋のおさまり検討は当然必要ですし、アンカーが梁内にあればまだいいのですが、柱内や仕口部にあれば固定がしづらく、固定をどこから取るかという問題もあり、本数も1,000本以上あったため作業効率も問題となっていました。
また、そもそもアンカーの位置を決めるにあたり、上部構造となる木造のおさまりを十分検討する必要があります。当社が開発したオリジナル金物タイダウンシステム「ロッドマン」は、新田楽生苑の場合、木造の土台から最上階までつながるため、「ロッドマン」が通るように壁の縦枠位置や金物位置を検討し調整しなければなりません。他にも壁内へ仕込む配管やボックス、スリーブなどと干渉しないか等も検討した上で、すべて木造の躯体や「ロッドマン」の位置を決めていきます。
RC造は下から積み上げていき、木造は屋根から土台へ構造を検討していく中で、それぞれ壁厚や仕様が異なるものを最終的に取り合わせるために並行して二重に検討していかなければならないことが、非常に手間がかかり、また難しい点といえます。
奈留氏 今回のような中層木造建築物では、地震や台風により水平力が作用すると非常に大きな浮き上がり力が耐力壁に生じます。そこで、既存のホールダウン金物に代わり、 「ロッドマン」を採用しました。
「ロッドマン」は通常の3階建て以下で使用しているホールダウン金物の10倍以上の強度を持ち、建物の中でより高い強度を求められる部分で使用しています。これは「MOCXION INAGI」や「花畑あすか苑」(東京都・足立区)でも導入した技術で、今後の「(仮称)キャンパスヴィレッジ生田」でも採用し、木造の4層を一直線でつないでいきます。

通常の3階建て以下で使用しているホールダウン金物の10倍以上の強度を持つタイダウンシステム