公民連携の本質は「協働のパートナーシップ」
――ハード面での技術や資源活用をベースに、行政とはどのような関係を築くべきだとお考えですか?
大場社長 人口減少下にある地方都市では、行政単独でインフラや公共空間を維持が困難です。従来の「発注者=行政」「受注者=建設会社」という縦の関係から脱却し、共通の課題解決を目的とした「協働のパートナーシップ」が必要です。
私たちが重視しているのは、公園や公共空間を単なる施設としてではなく「居場所=プレイス」として設計することです。欧米で普及するプレイスメイキングの概念に、日本建築がもつ「境界を曖昧にし、伸縮的に空間を使う文化」を掛け合わせることで、欧米の模倣ではない「山形らしい公共空間」をつくることができると考えています。
行政にとっては「まちづくりの戦略拠点」、住民にとっては「暮らしを豊かにする居場所」、事業者にとっては「持続的な商業の舞台」。この3者の役割を明確にした上で協働することが、公民連携による地方創生の本質だと捉えています。
若者の定住を促す学生アパート整備をPPPで推進
――具体的な事例として、舟形町との連携プロジェクトについて教えてください。
大場社長 現在、山形県35の市町村のうち22市町村が過疎の状況にあります。私は社会人大学で地方創生や防災を研究していますが、山形県の各地方自治体の首長をくまなく訪問した際に、舟形町の森富広町長は、同様の危機感を抱いていました。舟形町の近隣の山形県新庄市に「東北農林専門職大学」の開校が決まり、学生を舟形町にグリップし、若者定住に寄与するために、横断的なチームを結成し、アパートを新築するプロジェクトがスタートしました。
舟形町では、大学開学に伴い、学生アパートの整備をPPPスキームで進めています。これは単なる住居供給にとどまらず、交流機能を持つ共用空間を設け、学生と地域住民が自然に交わる場を設計しました。若年層の定住促進と地域社会の活性化を同時に実現するモデルケースであり、建築会社が「ハード」だけでなく「コミュニティ形成」というソフト面まで設計することの意義を示す事例となっており、今、5棟目まで着手しています。

東北農林専門職大学の学生向けアパート1号棟
同大学は専門職大学ですから、これからは地元で就職してもらうために街と連携するフェーズに入ります。たとえば茨城県境町では25年間住み続けると戸建て住宅と土地が無償提供される定住促進住宅「アイレットハウス」の施策を進めていますが、同様の住まいインフラの形成を舟形町とともに進めていきたいとも考えています。

近隣住民と東北農林専門職大学の学生と交流風景
――リノベーション工事も含めたプロジェクトだったそうですが、課題はありましたか。
大場社長 築年数の経過に伴う構造体の不確実性と法規制の適合性に苦心しました。耐震・断熱性能を現行基準に引き上げるには、コストが増大しやすく、収益モデルをどう成立させるかが難点でした。また、地域の文化資産的な価値を保持しながら現代的な利便性を付与するバランスも問われます。当社では「資産の再生を通じた地域への再投資」という考えを軸に、リノベーションを単なる改修ではなく、都市経営における資源循環の一環として位置付けています。




