強みは「探す」のではなく「自分で決める」ことから始まる
森本社長が強みに特化できた背景には、ある人物からの「強みとは決めるものである」という助言があった。三和建設の戦略は、この言葉を原点としている。森本社長は、面接に訪れる就活生と強みについて話す際、こうアドバイスするという。「強みは決めるところからスタートする。自分探しの旅はもうおしまいしよう。自分が何者であるかは、自分で決めよう」。企業も同様に、強みは探しても見つかるものではなく、決めた瞬間から積み上がっていくものだと断言する。

2011年に事業領域を絞り込み、「FACTAS®」を立ち上げてから今年で15年目を迎える。当時は珍しかった工場ブランドだが、専門性を高め、衛生管理や特殊設備への対応など、食品工場ならではの厳しい要求に柔軟に応える体制を構築した。「食品工場は国内に一定のマーケット規模がある。一時期、日本のものづくりは海外に流出したが、食品生産は国内に定着する傾向が強い。ただし、半導体や自動車工場とは異なり建設投資に安定性がある反面、高度なノウハウが求められるため参入障壁は高い。簡単な分野は模倣されるが、困難な分野ほど極める価値がある。もともと食品工場に強みがあったわけではなく、『食品工場を強みにする』と決めたときから、三和建設の今がある」(森本社長)。
このようにターゲットを絞り込んだブランディング戦略は、社員の意識にも変化をもたらした。「この分野であれば大手にも負けない」という誇りが生まれたのだ。超高層建築ではスーパーゼネコンに対抗できなくとも、食品工場や特殊機能倉庫という特化した土俵であれば互角以上の勝負ができる。この自信が社員エンゲージメントを向上させ、成長速度を加速させている。事業の絞り込みは、経営理念である「つくるひとをつくる®」と深く結びついているのだ。
今後も三和建設は、得意分野への「選択と集中」による専門性の深化と、若手とベテランの融合による多様性ある組織づくりを両輪として、持続的な成長を目指す。「つくるひとをつくる®」を理念に掲げたことで、社内のエンゲージメント調査でも好意的な反応が増え、離職率も低下した。約8割の社員が「働きがいのある会社」と実感するなど、人を大切にする理念は確実に浸透している。
「集中戦略」と「理念経営」の融合が導く、永続への道
講演の最後に森本社長は、企業のトップが「何を求めるか」を明確にする重要性を語り、セミナーを締めくくった。「少なくとも三和建設は人によって選ばれ、永続していく会社である。人が何によって選ぶか、そのためのツールとして『集中投下戦略』がある」
また、顧客や社会に「記憶される」要素として、人の成長は欠かせない。だからこそ経営理念で「ありたい姿」を明文化し、発信し続けている。 会社のすべての取組みを社員の意識と一致させる「理念経営」と、独自の「集中特化戦略」。この二つを融合させた三和建設の挑戦は、中小ゼネコンが次代を生き抜くための大きなヒントとなるだろう。



