監理技術者や主任技術者がICT研修のために現場を離れても良いか?
ICT土工研修について、国土交通省も後押ししている。国土交通省は専任技術者が技術研修などの参加で一時的に現場を離れても建設業法上、問題がないことを発注者や業界団体に周知する方向性で検討に入った。現行法令上、専任技術者には現場代理人のような「常駐」義務はないが、「専任」であるがゆえに、現場を離れることに問題があるのではかという認識もあったため、あらためて法令解釈を明確化し、継続的な技術研さんへの環境整備を行う。
「現場代理人は常駐が求められています。一方、専任が求められている監理技術者や主任技術者が研修会などで一時的に現場を離れることに問題があるかどうか、発注者やゼネコンの中でもさまざまな認識がありました。現行制度でも研修会に参加することに問題はありませんが、一部では専任であるがために、現場を離れることが出来ないのではないかという認識というか誤解があったのです。国土交通省が近く研修参加は可能という通知を近く発出するウラには、群馬県建設業協会のICT土工研修が開催されることと大きく関係していると見ています。ICT研修への参加を促す大きな通知になるでしょう」(都内現場の監理技術者)
国土交通省と群馬県も評価する「i-Construction対応 ICT土工研修」
「i-Construction対応 ICT土工研修」のカリキュラム概要は大きく分けて3つのコース。1つ目は「i-Construction概要」で、1回目を9月6日、2回目を10月中旬に実施する。2つ目は、実習と講義の両方で「起工測量と3次元モデル設計」、1回目を9月21日~22日の2日間、2回目は10月中旬を予定している。3つ目は、実習と講義の両方で「ICT施工と出来形管理」として、1回目を10月中旬、2回目を11月に実施する予定だ。
「特に大きなポイントは、OJT(職場内訓練)とOff-JT(職場外訓練)の中間の研修施設を目指したことです。研修で実践を学び、それを今度は自社内で他の技術者にも広めていく。ICT技術はこうした好循環で広めていくことが望ましいのです」(青柳会長)
国土交通省関東地方整備局はこのようにコメントしている。
「そもそも群馬県建設業協会単独で行うことの視点が素晴らしい。ICT土工を主体的に行うとの意思の表れと我々は受け止めています。また、ドローンについては測量会社にお任せするところが多い中で、地域建設企業が自主的にi-Constructionの技術を網羅的に学び、生産性向上を果たしていくという意向は、ICT施工の大きな底上げになります。ICT土工の工事は国土交通省だけではなく、群馬県も実施し、工事も発注している。そういう中での研修実施は、ICT土工工事の普及に大きく貢献することになると考えています」
一方、群馬県県土整備部建設企画課長のコメントは次の通りだ。
「現場の生産性を向上させるICT活用工事を普及拡大するためには、安価で使いやすい機器類とともに、それを扱える人材が不可欠である。特に、これまでICT活用工事に携わる機会がなかった地域建設企業の現場技術者にとっては、その知識と技術の習得が課題となっている。こうした地域の課題を解決するために、群馬県建設業協会自らが、ICT土工研修を企画・開催することは、時宜にかなった意義深いものであり、敬意を表する。また、カリキュラムには3次元測量、3次元施工図作成、ICT建械による実習、3次元出来形管理、3次元データ納品まで、すべてのプロセスが盛り込まれており、群馬県におけるICT活用工事の普及拡大に大きく寄与するものと期待している」