群馬建協が示したTwitterの効力
近年では、企業でも政党でもTwitterの効力があらためて見直されているが、群馬県建設業協会はいち早くSNSでの役割を認知している。そのため、各都道府県建設業協会の中のTwitterでは発信力は強く、フォロワーも2900となっており、建設業界では異例の数だ。
群馬県民も豪雪や土砂災害に見舞われるなど災害とは無縁ではない。日々フォロワーが増加しているのは、災害情報への注目度だけではなく、建設業界に対する関心度も高くなっているからだ。
ちなみに、2016年9月には、群馬県下の渋川・沼田で集中豪雨があった。土砂災害にも見舞われ、道路も寸断した。その状況をTwitterで報告、県民から多くの感謝の言葉が寄せられた。群馬県建設業協会にはTwitter上では次のような声が寄せられた。
- 復旧作業員お疲れ様でした
- こういうツイートは田舎にはとても役に立つ
- パトロールに復旧にお忙しい中、ツイート本当にありがとうございます。ピンポイントな情報が寄せられ、感謝します。
この時は、大手テレビ局のマスコミも積極的に群馬県建設業協会提供の画像を使用した。
「建設業界自らが汗をかいている姿を広報しなくてはいけない時代です。ただ、それをマスコミだけに頼るのではなく、自らが広報するため、TwitterやITなどの活用が必要です。フォロワーも増えてまいりましたが、やりがいも当然出できます」(青柳会長)
2017年1月も大寒波に見舞われた。その時も降雪状況をTwitterで報告している。
実は、「ぐんケンくん」については青柳会長自身もリツイートを積極的に行なっている。建設業協会会長としては珍しく、Twitterにより、自分自身の情報発信も行なっている会長だ。
建設業界の処遇改善には「国民の理解」が必要
群馬県建設業協会によるTwitterでの情報発信は、必ずしも災害情報周知活動だけではない。
5月30日(ゴミゼロの日)には、「道路クリーン作戦」を実施。会員企業から総勢2,000人を超える人が参加して群馬県下全域で一斉に道路清掃に取り組み、システムの操作訓練を兼ねて活動状況を共有する。
「清掃はストレスのない訓練だと認識して欲しいです。一方、こうした国民と向き合う姿勢は大切なのです。県民からは非常に好意的な声が聞かれています。たとえば除雪についても、広報した結果、建設業界は昼夜を問わず除雪をしてくれて大変ありがたい存在だというお声もいただいております。
建設業界が処遇改善を訴える中で、やはり国民からのご理解が必要です。建設業界はこんなにがんばっている。だから処遇改善に賛成だという声がわれわれだけではなく、国民からあがってこないと難しい面もあります。だからこそ、こうした活動も必要なのです」(青柳会長)
大分建協も「ぐんケン見張るくん」と同様なシステム導入へ
そして「ぐんケン見張るくん」に他県も注目するようになった。
大分県建設業協会は群馬県建設業協会を訪問し、「ぐんケン見張るくん」について意見交換を行なった。工藤康世青年部会長、池永俊八専務理事ら4人が訪れた。
この席上、青柳会長は、「災害時にTwitter 検索をすぐにでもする時代になりました。ぜひ群馬でのここ3 年あまりの災害情報の共有と、広報戦略としてのTwitter 発信についての成果で参考になる点がありましたら活用されればと思います」と挨拶。
群馬県建設業協会からは、反響が多いツイートでは3000件を超えるリツイートがあり、行政である前橋市や高崎市にもリツイートされるなど信頼性が高いことの説明があった。これに対して池永専務理事は、「行政や県民から大変信頼を受けているシステムであると感じた。災害時にまっさきにかけつける建設業が一番、災害情報を保有している。これをなんとか活かせないかと思っていたが、是非、検討したい」と導入に意欲を示した。
特に、青柳会長が力点を置いたのは、Twitterという開放系のSNSを活用したシステムの利点。閉鎖系のシステムではうまく機能できないところもあり、「開放系のSNSによる情報発信が必要」と述べた。
最終的に大分県建設業協会は、青年部が中心となり、SNS災害情報共有システムを導入することに決定した。地元自治体などと協力し、準備を進め、2018年度からの導入を目指していく方針だ。
大分県は2016年の熊本地震や2017年7月の九州北部豪雨など災害に見舞われている中で、災害情報共有システムの実現を模索していた。「ぐんケン見張るくん」と同様なシステムとなる。「この取組みにより、災害対応で広く建設業の役割を理解してもらいたい」(大分県建設業協会)との認識だ。
国民の側も地域建設業の辛苦に報いる努力を
「ぐんケン見張るくん」は群馬県建設業協会会員1人1人が主役である。情報を得て写真撮影する人、その情報を管理する人、Twitterで発信する人、役割はそれぞれでありつつも、誰もが欠けてはならない大切な存在だ。
建設業界は、「担い手確保・育成」が求められている中、他産業との人材獲得競争において、処遇改善は待ったなしである。「ぐんケン見張るくん」のデモンストレーションやその後の運用状況を見て、多くの行政関係者や国民からは感謝と驚きの声が上がっていることも事実。しかし、それだけでは終わらせてはいけない。地域建設企業は、災害があれば、その復旧につとめているところであるが、それをただ「感謝します」という声に留めていいのだろうか。
建設業界は、「ぐんケン見張るくん」の取組みにとどまらず、生産性向上など日進月歩で努力を続けている。そうであるならば、国民や行政の側も、地域建設業の辛苦や努力に対して、処遇改善などさまざまな施策で報いるべきとの声をより多く発するときに来ているのではなかろうか。
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