これからは副社長の時代。「もうすぐ社長が変わります(笑)」
――西田社長ご自身のキャリアは?
西田社長 私は大阪大学の工学部構築工学科建築コースを出ました。一応、1級建築士です。今は何の役にも立たないですが(笑)。大学卒業後、「最初は、他人のメシを食え」ということで、株式会社奥村組に入りました。
奥村組には5年ほどいましたが、「はよ、帰ってこい」ということで西田工業に戻ってきました。昭和48年4月のことです。戻ってからは、現場には出ず、民間工事の企画営業を担当し、計画から完了まで面倒を見ていました。
――西田副社長は最初から西田工業に就職された?
西田副社長 そうです。同じく大学で建築を学びました。西田工業では大阪本店に配属され、半年間ほど建築の現場に出た後、土木の現場を1年間ほど経験しました。その後、総務、経理、営業などを10年ぐらいやりました。
――ずっと大阪ですか?
西田副社長 そうです。私の父親が当時社長として福知山にいました。実は、私自身「親元で仕事をしたくない」という思いがあったのですが、当時会長だった祖父に「西田工業に入れ」と強く言われたので、仕方なく西田工業に入った経緯があります。ただ、「親元はイヤ」だったので、結果的にずっと大阪で仕事してきました。
西田社長 西田副社長の祖父は2代目社長、私の父が3代目社長、西田副社長の父が4代目社長で、私が5代目社長です。建設会社には、同族間の主流争いで疲弊した会社は少なくありませんが、西田工業では、第2世代の兄弟が力を合わせながら、やってきました。これからは西田副社長をはじめ、第4世代が力を合わせる時代を迎えています。社長はもうすぐ変わります(笑)。

後継者(?)の西田副社長と福知山城
――次期社長としての意気込みは?
西田副社長 私が社長になったときには、もっと計画的に後継者を決めていくつもりです。誰にするかはもちろんですが、いつ交代するかを含めて、最初から決めていく必要があると考えています。長年社長をやっていると、次にバトンタッチするのはなかなか難しいと思います。「今は時代が悪いから」といって、バトンタッチをついつい先送りしてしまう。本人の意欲が高いうちに社長交代をすべきだと思っています。
西田社長 その辺は、他社の失敗例を学びながらね(笑)。会社の活力が衰えたときに交代では、やはり困るので、計画的に社長交代をやっていくことは大事です。100名からの従業員がいますので、簡単に潰して良いわけはありません。社長が長く居座ると、倦怠感、オリが溜まってくることはありえるでしょう。
――なるほど。
西田副社長 社長在任が長すぎると、「守りの経営」になってしまいます。どうしても「現状維持」に走ってしまうのですが、それは会社の衰退でしかありません。それよりは、試行錯誤しながらでも、新しいことをやっていく方が、良いと思います。それは失敗ではなく、経験なんだと思います。そういうことをしないと、会社はなかなか変わっていきません。長い目で見ると、同じことを繰り返しているだけの会社は、いつか衰退していきます。
――公共と民間で仕事のアプローチが違うというお話ですか?
西田副社長 新しい取組みは、会社に多くの刺激と成長を与えてくれると考えている、という話です。仕事そのもののアプローチは誠意をもち、官民関わらず、心すなおに取り組みます。ただ言えますのは、私は、公共の仕事は大事だと思っています。社会基盤整備、国土保全という意味合いがありますから。
例えば、災害が発生したときに、出ていくのは建築ではなく、まず土木です。確かに、新規の公共工事の発注量は今後減るかもしれませんが、橋の耐震化などメンテナンスの仕事はなくなることはありえません。会社によっては、「土木を辞めて、建築一本で」という選択をする会社もあるかもしれませんが、西田工業は、そんなことは絶対しません。なにかあったときに、土木の力は必要ですので。

西田工業株式会社初代社長(西田種蔵翁)の殉職場所に建てられた記念碑。石碑の裏には、その死を悼む文言が刻まれている。
技術者の「質」ではなく、「人数」で評価する発注機関に不満
――土木と建築の売上げの割合は?
西田副社長 昨年度は建築が半分以上を占めています。
西田社長 近年の割合を見ると建築2・5に対して、土木が1・5です。
――公共工事は国の割合が多いんですか?
西田社長 そうです。近畿地方整備局が多いです。官公庁のやり方で気に入らないのが、ある発注機関では、突然会社の評価方法が変わり、技術者の人数の増減のみを評価し、技術者の質に光を当てずに、総合評価の点数を決める方式になりました。
一人ひとりの質を上げ、技術力を上げ、能力を上げても評価されません。前年より定年退職も含めて人数が減ったことにより、点数を低く抑えられるという制度が採用されたりしていることです。低い価格で入れても、点数でひっくり返されることがあります。
こちらとしては、1人当たりの施工高を上げていきたいのですが、官公庁は人数、頭数で考えているわけです。「頭数を減らす業者はダメだ」と。質は関係ないんです。
――福知山周辺だと公共の仕事はどのようなものがありますか?
西田社長 由良川及びその支流の河川改修、治山、砂防堰堤、出水調整の貯留槽などですね。あとは共同溝が増えているのと、水道管の更新工事などもあります。
西田副社長 私が西田工業に入ってからの公共工事のイメージは、洪水対策なんですね。福知山は盆地なので。
西田社長 10年ほど前、福知山で大きな水害がありました。3年ほど前にも内水で被害が出ました。福知山は、地形的に水が滞留しやすいんです。福知山市でなにか災害が発生したときには、西田工業をはじめ市内建設会社が対応しています。