現場監督が休日返上し、積算作業で疲労度増す
「d.予定価格の事後公表の一部見直し」をめぐっては、東京都の工事は予定価格と実勢価格の乖離があると東京建設業協会は指摘した。
「時間的制約があるなかで、事後公表により工事着手が遅れる可能性があり、中小建設企業の中には現場の技術者が積算のために休日を返上していることもある。東京都の事業進捗や公共施設の供用開始時期、工事規模、地理的条件などを考慮の上、時間的制約が厳しい案件や事務所発注案件などを対象に事前公表に戻し、あらためて検証して欲しい」。
「東京都の工事は民間と比べてとんでもなく高い」という小池都知事の考えとは異なり、むしろ、本来の価格帯よりも東京都の工事は低いようだ。さらに、ただでさえ多忙な現場監督が、積算作業で疲労している実態も明らかになった。
東京建設業協会は「中小建設企業は予定価格を積算して利益を確保することを調べる必要があるので事前公表をお願いした」と述べる一方、発注図書の情報量が少なすぎるため、予定価格や応札額の積算に大きな支障が出ているのは、建設会社の規模の大小問わずあるとも指摘した。
それに対する東京都の回答だが、猪又謙財務局経理部契約調整担当課長は「見積り参考資料は、可能な限り、入札公告時で公表するなど適正な見積り期間を設定するよう検討する」と語り、東京都財務局の五十嵐律契約調整担当部長は「これは制度というより、運用の問題と認識した。契約担当部門だけでなく発注・技術部門とも連携し、しっかり対応する」と答えた。

楠茂樹・入札監視委員会制度部会部会長
これらの意見交換を踏まえた上で、楠茂樹入札監視委員会制度部会部会長は、東京建設業協会に対して次のような質問をした。
「国も東京都も事後公表だが、見積り参考資料など、どこに差があるのか?」
これに対する東京建設業協会の回答は辛口だった。
「率直に申しますが、国と東京都のレベルはまったく異なる。東京都が早く国と同等レベルに到達して欲しい」