建設作業の「標準化」で生産性30%アップ!
――なぜ、職人技の「見える化」を?
丸高工業 私は10代の頃から、父に職人の世界に放り込まれ、荒っぽい指導を受けました。ですから、職人の世界をよく理解しています。この仕事はさほどの技能は要らないが、ここからは熟練した技能が必要になるという感覚を理解していたので、もっと建設業の生産性は効率化できるのではないかと思いました。
――職人の世界はこれまで非生産的だった?
丸高工業 たとえば百貨店でリニューアル工事があったとしましょう。深夜23時から工事がスタートすると、商品に養生をかぶせます。その作業が終わると、とびが足場を組み立てて、次に解体業者が天井の解体に入ります。しかし、とびが作業をしている時間は、解体業者や養生業者は待機の時間となっています。もし、1職種で養生も解体も担当できれば、生産性が上がります。しかし、現状の作業は種類ごとに分離されています。
もし養生、足場、解体までを一人でこなせる標準技能工になれば、生産性は5倍ほどアップします。ですから丸高工業では社員の標準化の研究開発を進めていますし、まだまだ現場にはいろんなところに生産性向上の余地は残っています。 職人不足が問題になっている型枠工等についても、丸高工業で開発した標準化耐震型枠工法であれば、女性でも楽に運べて、内装工等の方でも型枠工の仕事ができます。
次々と実現した建設現場の「標準化生産システム」
――建設作業の標準化の先にあるものは?
丸高工業 丸高工業は、標準化された作業を自動化し、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ドローンなども活用し、建設生産システムの構造そのものを変革したいと考えています。工法だけではなく、施工管理技士が行う現場管理自体も標準化できます。実際、丸高工業には、若手社員でも簡単に現場管理を実践できる施工管理標準化マニュアルがあります。建設現場での週休2日は、モデル工事以外ではなかなか難しいですが、丸高工業では人手不足の状況の中でも、職人や施工管理者の仕事を標準化することで、10%の現場で週休2日を実現しています。今後この比率をもっと高めるためには、協力会社の理解と協力が必要です。
かつて、建築科を卒業したばかりの新入社員1~2ヶ月くらいの研修を経て現場に出しますと、当然、現場のことが分らないのですから怒られることもあり離職者もいました。しかし、丸高工業では育成に時間をかけており、標準化したマニュアルに基づいた2年間の研修で、基本的な施工管理業務ができるようになってから現場に送り出しています。そのような仕組みにしてからは、 社員の応募も急拡大し、離職者は大幅に減少しました。