脱水症状、凍傷なんて日常茶飯事
――業界にはすぐ慣れましたか?
オダ 土木業界は基本、肉体労働です。虚弱体質が1年現場を体験すればそれなりの体格になります。肉体的なキツさに慣れるまではある程度の根性が必要です。それに人間関係もありますが、私の場合、友人の社長が常に一緒にいて、励ましてもらっていたこともあり、続けることができました。
どんな業種にも思うことですが、共同作業の仕事をする場合、一人では基本長続きはしないと思います。支えてくれる誰かの存在がないと。その仕事が好きで始めた人でも想定内の出来事が起こると、人は脆いものです。
――働いていて楽しかったことを教えてください。
オダ 更地に建物が造り上げられていく。まったく何もなかった場所に大勢の人の力によって何かが完成していくのを見るのはとても楽しかったですね。私も十年近くこの業界にいましたから、この高速道路のこの部分はとか、あの橋はうちの会社がやったとか自慢げに話すことは楽しかったですね。特にうちの会社は土木も建築もやっていましたから、いろいろな職人を知ることができました。
――職人の方にはどんな方がいましたか?
オダ 職人の方にはどんな方がいるかという問いに答えるなら、本当にいろいろな人がいると答えるしかありません。でもそのいろいろな人に共通して言えるのは、ギャンブルと女が好き。その話題を2つか3つ持っていれば、すぐに親しくなれます(笑)
――逆に辛かったこと、不満だったことは。
オダ 辛かったことは、やはり現場環境ですね。夏は暑い、冬は寒い。まさにその言葉の極地を体験できます。現場次第では脱水症状、凍傷なんて日常茶飯事の環境ですからね。施工主の無茶な追加注文なんかがあると、納期を遅らせるわけにはいけませんから、作業が深夜まで及ぶこともありました。最初の図面なんてあってないような注文をする発注者もいましたし。
――発注者との関係はいかがでしたか?
オダ スタートで決めた図面通りに作業工程が進んだことは一度もありませんね。それは一方的な場合もありますが、こちらからの提案でこうしたほうがいいのではということもあります。担当した人の話術次第で、それを一方的ととらえるか、ここまでやってやろうという気持ちは変わると思います。