一人前の土木技術者は、土と水を制す
「土木の木は、水だ。土と水を制すと土木技術者として一人前だ!」
「土木の面白さは、土と水との戦いの地下構造物にある!」
――この2つの言葉は、私が橋梁会社に入社した時、先輩から叩き込まれた言葉だ。
この現場は、はじめて先輩の格言の意味を身をもって知った瞬間でもあった。
そして、土木の仕事の醍醐味は、若い頃に徹夜で苦労して手掛けたこの橋梁基礎が、今も公共の方に利用されている、という喜びである。工事に参加した全員が、この現場を通るたびに、懐かしく土木屋の静かな誇りを感じているに違いない。
結果、発注者の国に高い評価を受けた。古臭い言葉かもしれないが、若い現場監督さんには、「土木の仕事は、意を尽くせば叶う!」「みんなが心を一つにすれば叶う!」ということを教訓にしていただければ幸いである。
土木の「歓喜の渦」を体感しろ!
ちなみに、この工事のもう一つの課題「美しい河川構造物として、河川敷の美観を保てるか!?」という点は、従来のレンガ造りの橋梁の意匠を踏まえ、通常のパネル型枠の代わりにGRC型枠(GRC; Glassfiber Reinforced Cement、ガラス繊維補強モルタル製品)を適用した。
レンガ模様の化粧型枠をコンクリート2次製品業者と繰り返し試作。基礎の沈設時期に平行して、制作方法、型枠割図、組立方法、剥離防止対策などをまとめ、結果的に完成の運びとなった。

レンガ模様の化粧型枠で橋脚完成
今の時代、土木工事に取り組む方々は、肩身の狭い想いを抱いているかもしれないが、ぜひ多くの物造り志願の若者に、「土木の歓喜の渦」を体感して欲しいものだ。この記事を通じて、一人でも多くの土木技術者が生まれることに期待したい。