建設技術者の人手不足5.5万人分を改善する生産性向上
——建設技術者不足に必要な対策は?
髙本 国も建設業界も全力をあげて取り組んでいる「生産性向上」です。国土交通省はi-Constructionなどで生産性を20%向上させ、必要人数を減少するという取り組み展開しています。生産性が向上しなければ、働き方改革による残業削減や週休2日制の導入によって、むしろ必要とされる建設技術者の人数が増加する可能性もあります。もっと建設技術者が不足するかもしれないというわけです。
建設業の労働時間を年間製造業の平均レベル(1,958時間)とした場合、生産性を20%向上できたと仮定すると、必要な建設技術者の人数は約30万1000人となり、約5万8,000人の不足に留まります。生産性向上をしない場合のシミュレーションより約5万5,000人分も改善します。より改善するためには、さらなる技術革新・ICT導入で生産性を25%~30%アップしなければなりません。

生産性向上すれば、建設技術者の人材不足数は58,475人まで縮小
——25%~30%の生産性向上は可能ですか?
髙本 20%アップの目標達成は相当厳しいと思います。ただ、大手ゼネコンを中心に技術開発も進んでいるので希望もあります。土木、建築それぞれの現場で、安全管理や点検検査、現場経験の少ない若手職員の業務支援など、さまざまな新技術を試験導入しています。たとえば、建設業の未経験者でも「スマートグラス」を現場で着用すれば、熟練技術者のアドバイスを受けながらスムーズに作業を進められるようになるかもしれません。ドローンやICT建機だけではなく、建設現場の生産性向上の余地はまだまだあると思います。BIMやCIMでもAIの活用で、上流から省人化が進められていくと期待しています。
しかし、独自アンケートによると「建設ICTについて具体的な情報を持っている」と回答した建設技術者は3割に満たず、まだ、建設業界全体に浸透しているとは言えません。そこで教育事業を担ってきた当社としても、建設技術者向けにCPDS認定セミナーを定期的に開催しているところです。