工期平準化と建設技術者の定年延長
——生産性向上のほかにも人手不足対策は?
髙本 今回のシミュレーションでは65歳定年で計算していますが、思い切って70歳定年にすれば、さらに建設技術者の不足をおさえることが可能です。
2016年の建設技術者の平均有効求人倍率は4.76倍。建設業界全体の離職率は39.7%と高く、長時間労働と休日出勤が問題で、現役世代の延長が求められます。現在、多くのゼネコンでは60歳が定年で、再雇用で65歳まで働く方が多いです。まだ65歳まで定年延長しているゼネコンはそれほどありません。しかし、建設技術者はすでに高齢化しており、31万人の従事者のうち、55歳以上が31.4%です。将来的には65歳定年は避けられませんし、さらに70歳までシニア層の活躍が必要になってくると思います。
——65歳以上は健康上からも現場に入りにくいのでは?
髙本 今はそうですが、バイタルデータによる心身状態の管理も可能になってきていますので、本人の自己申告だけではなく、ITを活用した健康管理で安全性を担保できるようになっていくと思います。そこまで安全・健康管理を強化していけば、若者に対しても建設業のイメージアップや入職促進に効果がでてくるはずです。もちろん安全・健康管理への取り組みと同時に、女性が働きやすい環境、年収の向上などで離職率を減らす必要もあります。
——工期の平準化も必要?
髙本 工期の平準化については、発注者と受注者の間に意識の乖離があります。工事が集中していることで現場監督が多忙になっています。ゼネコンが適正な工期で受注して、現場監督や技能労働者として働く方々の週休2日を確保することが重要です。それであふれた業務について省人化・効率化する検討が必要です。発注をかける側が全体的なバランスを取ることで現場監督にも負担がかからない仕組みが理想的ですが、国、地方自治体、デベロッパーなど発注者が工事発注をすりあわせすることは至難の業です。ここの交通整理は今後の課題でしょう。
建設技術者の転職理由と人材流動性
——建設技術者の人手不足の中、人材紹介会社の存在意義は?
髙本 インフラや建物の老朽化対策、災害復旧など、重要な責務を負っている建設技術者の人材不足は日本の根幹を揺るがす大問題だと思っています。ですから、せめて今現在、建設技術者として働いている方々は他業界に流出させてはいけないという想いが強いです。そこで、人材紹介会社の役割は大きいと考えています。
残業100時間、土曜出勤が当たり前、給与も低い、という状況では建設業界そのものに嫌気がさし、他業界に転職してしまう可能性があります。そういう方々に対して、もっと働きやすく、給料が高い転職先を提供していくことで、建設業に人材を留めたいと考えています。
——建設技術者の転職理由で多いのは?
髙本 「年収を上げたい」という希望が一番多いです。今の技術で正当に評価され、年収を上げることへの期待感が強いですね。一方、残業を多くしたいかと言えばそうではなく、残業歓迎という建設技術者は年々減少傾向にあります。ライフワークバランスが取れた範囲での年収アップを希望される技術者が増加傾向にあります。
——年齢別に転職意欲に違いは?
髙本 転職希望者の年齢は年々あがって40代~50代の建設技術者が増えています。スキルや経験が伴っていれば、この年齢でも正社員としての転職が成功するケースもあります。正社員でなければ、65歳以上でも企業とマッチングするケースはあります。若い建設技術者ほど残業時間の多さに不満をもっています。35歳以上の建設技術者はそれほど働き方への不満はなく、給与面での不満が大きいです。
——今後の建設技術者の転職動向を予測すると?
髙本 数年前に比べると建設技術者の転職は当たり前になりつつあります。人材の流動性は今後も加速化していくと予測しています。転職市場が活性化すれば、建設技術者の待遇も上がり、建設業界全体としても明るい未来につながると思います。今後は、ICTや働き方改革に取り組む会社と、そうした活動に熱心でない会社の二極化が広がっていくと予想できます。熱心である会社は建設技術者の人材確保も優位になっていくでしょう。
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