マネキン人形を墜落させる恐怖
――ところで、安全管理部は、主に何をする部門ですか?
大東建託 安全に関する法律や規則について、社内や協力会社に周知して、具体的な安全対策を各支店に提案する部門です。法改正の動向にも注視しています。当然、目的は「事故ゼロ」。そのために、VR技術の開発や体験型研修などを全国の現場で実施しています。
——体験型研修とは?
大東建託 2012年から現場体験型研修を実施しています。約6mの足場上からマネキンを墜落させる実験や、胴ベルト型安全帯とハーネス型安全帯で、マネキンの墜落時の体勢を比較する実験など、目の前で落下の衝撃を体験してもらっています。実際にマネキンが落ちるのを見ると、恐怖を感じて、安全意識が高まる効果があるので、社員だけでなく、協力会社にも参加を要請しています。
VRで墜落転落を疑似体験
大東建託 3月19日には、協力業者5社の15名、大東建託の工事担当者5名が参加し、埼玉県さいたま市の現場で、VRを利用した現場体験型研修を初めて実施しました。
——VRはどんな映像ですか?
大東建託 VRの映像は、鉄筋コンクリート造の建築現場の上層部(高さ60m相当)から、資材の「受け渡しミス」をきっかけに墜落するという設定です。VRのゴーグルとヘッドホン着用で、風の音や街の喧騒もリアルに再現しているため、参加者の中には怖すぎて震えてしまったり、途中でギブアップしてしまったり、リアルな墜落体験をできたという声が多かったです。
ヘッドホンとゴーグルによる没入感だけでなく、実際の足場を地面に置いて、その上でVR体験をしてもらうため、足元がしなって、本当に工事現場の高所に立っている気持ちになります。「立っているだけでひざがガクガクしてしまった」という参加者の声もありました。
——墜落後は?
大東建託 墜落を経験した後は、安全帯の着用を促す音声が流れ、なぜ墜落したのか第三者視点での解説が始まります。そもそも高所からの転落事故の原因は、その多くが安全意識の欠如です。1度事故を起こすと、2度と経験したくないと考えます。VRを通じてリアルに恐怖を感じることで、高所から墜ちない対策が必要だと、 安全意識の向上につながると確信しています。
——VRで墜落・転落以外の体験はできますか?
大東建託 釘打ち機から跳ね返った釘の恐怖体験もできます。
――それは恐怖ですね。
安全教育もここまで来たか。
その前にやることあるだろう。自社技術の開発とか自社工場作るとかさ。
他社と比べて30年は遅れてるんだけど。
出来高や出来形を良くする現場造り、場所や物だけでなく、作業段取り、作業の方法、施工管理の方法にまで広げて、整理・整頓を徹底すれば、災害ゼロは、ついてきます。今の現場管理者は、忙しすぎです。20年、30年事故のない協力事業者や作業員さんに安全・安全と呼び掛けても他人事です。良い仕事を効率良くするためには、どうするかの視点で、安全指導を見直してみるべきではないでしょうか。