ドライブ中に「この法面良いな」と感心する法面屋の職業病
法面の仕事をしていると、車をドライブ中、パッと目に入った法面に対して、「この法面良いなあ」と感心することがあるそうです。「職業病みたいなもの」と笑いますが、「カーブなのに割付がきれい」とか「スゴく高いなあ、大変だったろうなあ」などと考えてしまうと言います。
法面工事のデキの良し悪しは、「施工管理と言うより、作業員のウデの問題」にかかっていると指摘します。法面作業は、1現場だいたい5〜6名のチームで作業するケースが多く、特にそのチームのリーダーの手腕にかかっていると言います。「一般の人にはわからないと思いますが、キレイな法面を仕上げる作業員さんは、われわれにとってリスペクトの対象。構造物を見ているというより、作業員さんの人間性を見ている感じですね」。
半生を法面工事に捧げてきた篠崎さんですが、「法面工事の魅力は?」ときくと、口が重くなります。「法面工事の魅力ですかあ…。う〜ん、難しいですね。地味ですものね」。「捏造でも良いですから」と水を向けても、なかなか言葉が出てこない様子。最終的に「働きやすい、この会社自体が魅力的なので、法面工事を続けています」という少々ズレた回答となりました。ウガッた見方をすれば、法面工事には、実際にやってみなければ分からない魅力があるのかもしれませんね。
法面作業は、経験を積めば「ある程度」できる
篠崎さんがリスペクトする法面作業員さんが、前田浩士さん。法面工事30年のベテランです。前田さんに対し開口一番、こんな愚問をぶつけてみました。「法面作業は、現場を踏んで資格を取れば、誰でもできるようになるものですか?」。前田さんは笑顔で「ある程度はできますよ」と答えました。この「ある程度」という言葉のウラに、前田さんの30年間におよぶノウハウが凝縮されているように感じられ、嬉しい気持ちになりました。
前田さんが法面の世界に入ったのは、父親が勤めていた法面緑化の材料を卸す会社で、新たに法面作業チームを作る話が出て、それに誘われたこと。当時は法面について何も知りませんでしたが、同級生と一緒にチームに入りました。「仕事をずっと続けようとか、深く考えていなかったですね」。
初めての法面現場は、体力的にキツイものがありました。特に冬の寒さはツライものでしたが、「仕事がツライ」と感じたことはありませんでした。なんとか頑張れたのは「苦楽をともにできる同級生がいたからじゃないかな。孤独だったら、どうなっていたかわかりませんね」と振り返ります。
ところが、2年が経った頃、心の支えだった同級生が次々辞めていき、6名いたチームは2名になっていました。同級生については「やっぱり、ツラかったみたいですね」と言葉は少なめ。自分については「他の仕事をやってみたいと思ったことはないが、なんとなくモノを作るのが好きで、仕事を続けていた感じ」と振り返ります。気がついたら、30年経っていたという感じのようです。
法面という言葉自体、はじめて知りましたが、こういう仕事をプロとして生業にしてくださる方に感謝です。
仕事の意識もかっこいい!
大雨警報や土砂災害警戒情報など、最近はよく耳にします。「土砂崩れで、法面ごと流されました」…など、斜面の崩落は、大きな被害となります。
災害を防ぐ、また 最小限に食い止めるためには、土木、そして 法面などの基礎工事が何より重要ですね。
地味で、ありふれた景色にしか見えないため評価されにくいけれど、とても大切な工事だと 、理解しました。
これからは 路肩の景色も、工事に関わった方々に感謝と尊敬を持ちながら、気にして見ることにします。
また、解るひとには、良いものはきちんと伝わります。どうぞ、誇りを持って、これからも良い仕事を続けてください。それが、国土全体の、そして私たちの未来の安全に繋がることですから。