東京都主催の「時差Biz」を全国展開する大京グループ
本来、「時差Biz」は東京都が行っているものだが、大京グループでは全国展開している。この試みはグループ人事部が部署ごとに募集をかけ、希望する部署が実施。楢舘氏の上長は「フレキシブルに積極活用して欲しい」と部下に指示を出し、楢舘氏は2回「時差Biz」を活用した。
建設技術者の働き方改革は、施主の動向によって難しいとされてきたが、まずは「時差Biz」を活用した楢舘氏の話を聞いてみよう。
――普段の労働時間について教えてください。
楢舘 平日は朝9時に出勤し、17時半に退勤するのが定時です。書類作成などの業務で残業になる場合もあります。他のゼネコンと大京穴吹建設が異なるのは、指定休日となっている土曜日・日曜日にお客様への提案業務が多く入る点です。
大京グループが管理しているマンション管理組合を中心に、大規模修繕工事や給排水設備等の改修工事を提案します。お客様のご都合に合わせ、土日は朝10時から、遅い時間ですと夜6時から打ち合わせの予定が入ることもあります。代わりに火曜日や水曜日に振替休日を取得しています。
――大規模修繕工事が増えているからですか?
楢舘 そうですね。消費税の増税が予定されていることによる駆け込み需要の増加も理由の一つだと思います。また、2020年東京五輪の開催前にマンションを綺麗にしたいという狙いもあるのではないでしょうか。
――時差Bizを使った感想は?
楢舘 11時出勤、19時半退勤として使いました。私の担当エリアは横浜市ですが、通勤電車内では座ることもできました。別の社員の中には、退勤後のプライベートの時間を増やすために、30 分早く出社して30分早く退勤した者もいました。
――時差Bizの課題点とかはありますか?
楢舘 私は3〜4棟のマンション大規模修繕工事を管理しています。もし「時差Biz」を使った日に、お客様から「9時からすぐ来て欲しい」という要請があれば、すぐ対応できないのではないかと懸念していました。実際にはお客様からの呼び出しはありませんでしたので良かったですが、「もしものときは、お客様対応を変わってもいいよ」という仲間もいて、心強かったです。
――ゼネコン技術者がフレキシブルに時間を使うのは難しい?
楢舘 たしかに、ゼネコンの技術者は、お客様によって時間の使い方が決まることが多いです。自分の好きなように時間を使うのは難しい。ただ、時差Bizを活用することによって、精神的にゆとりが生まれ、次に頑張るための原動力にもなります。
ストレスが溜まっている中での見積書や提案書の作成業務は、時間をかけてもなかなか進みませんが、時間を自分の思うように使用できるのであれば、意欲と生産性が向上します。
――見積書や提案書はテレワークでも可能だと思いませんか?
楢舘 そうですね。私もモバイルパソコンが付与されれば、いつでもどこでもチャレンジしていきたいです。将来的にはモバイルパソコンを全社員に付与する方向で進んでいますし、テレワークもトライアルで実施しています。今後、社員へのヒアリングを通して、問題点の改善につとめることで、さらに働きやすい環境になっていくと思います。