軍艦島は世界ナンバーワンの廃墟
——3Dデータを活用して、どのような活動、展開が?
出水享 VR技術を持っている株式会社ハコスコ(東京都渋谷区)とコラボして、軍艦島のVRを開発しました。ハコスコの藤井社長から声をかけてもらって実現しました。制作した軍艦島VRは2016年2月にGOOD DESIGN Marunouchi Exhibition #03「学ぶ・知る・体験するデザイン」で展示しました。
2017年には、写真家の佐藤健寿さんともコラボして、写真集「THE ISLAND 軍艦島」の撮影やTBSのテレビ番組「クレイジージャーニー」の収録にアドバイザーとして同行しました。一緒に軍艦島に行ったとき、佐藤さんは「軍艦島は世界ナンバーワンクラスの廃墟だ」と絶賛していました。世界中の廃墟を見てきた佐藤さんの言葉は、私の心に突き刺さりました。
私が初めて軍艦島を上陸したときの気持ちを思い出し、軍艦島は「世界に誇れる長崎の宝なんだ」と再認識させられました。佐藤さんとは、写真集の出版記念トークイベントを長崎市のチトセピアヒールで行い、ホールが満員になる500名の参加者がありました。佐藤さんとは今後もいろいろなコラボができたらと考えています。
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——他のコラボの予定は?
出水享 まだ詳しいことは言えませんが、世界的に有名な映像関係者とのコラボも進んでいます。他の分野の方々とのコラボは、やはり新鮮で刺激的なので楽しいです。私自身、軍艦島の価値を再認識させてもらっています。
——3D模型もコラボで?
出水享 ええ。3D模型は、3Dプリンタメーカーである株式会社ホタルコーポレーション(大阪市住之江区)から声をかけていただき、コラボとして生まれました。われわれが製作した軍艦島3DCGを用いて、世界初のフルカラー3Dプリンターで出力したんです。フルカラーの軍艦島3D模型の製作も世界初なんです。
私は当時、「3Dはデータだからこそ意味がある」と思っていたのですが、実際に軍艦島の模型ができてみると「こっちの方が価値がある」と思いました。スマホを持っていない人や操作が苦手なお子供やお年寄りでも、誰でも軍艦島のカタチを見ることができるからです。その模型は長崎市に寄贈して、現在は長崎市の「軍艦島資料館」に展示されています。ぜひ足を運んでみてください。
軍艦島で一番守るべきは「護岸」
——軍艦島の保全で最も大事なことは?
出水享 軍艦島で一番守らなければならないのは、土木構造物である護岸です。軍艦島は、岩山の部分以外は埋め立てて造成した土地で、護岸が壊れると、島自体が波に削られます。島に人が住んでいた頃から、台風などで何度も崩れ、そのたびに直してきた歴史があるんです。
軍艦島の隣にある中ノ島は、同様に炭鉱の島だったのですが、ほったらかしにされたため護岸が崩壊して、岩山に戻ったんです。護岸を守らないと島がなくなってしまうんです。そのため、護岸の保全は最優先事項なんです。
でも海の工事には、とってもお金がかかるんです。重機や資材を運ぶ費用が高いんですよね。2017年、2018年に、端島小中学校下の大穴を埋める工事が行われましたが、億単位のお金がかかっています。通常の陸での工事だと、千万単位のお金で済むと思います。
軍艦島の整備にかかる費用は、2018年度から30年間で、108億2000万円と試算されています。個人的に、いくら世界遺産とは言え、人が住んでいない島の保全に巨額な税金を投入するのはどうかなと思っています。長崎市が「端島(軍艦島)整備基金」を設立していますので、寄付をお願いします。
私は軍艦島の魅力を発信し続けていきます。そして少しでも「軍艦島を保全したい」と思える「軍艦島の守り人」を増やしていく活動をやっていきます。そのためもいろんな人とのコラボは大切ですよね。