三佛寺奥院投入堂のデザインと物語性
「私は投入堂というのは“デザインとは何なのか?”という問いに対する答えを提示している気がします。」と生田さんは語る。
「大面取りが施された18cm角の柱は見る者を不安にさせる細さ。ギリギリまで削っているので非常に瀟洒で無駄のない印象を受けます。
まさに人の気持ちを打つデザインです。すると人は自然と“これを後世に残したい”と思うのではないでしょうか。投入堂が900年もの長い間あり続けているのは、このデザインのおかげも大きいと思います。」
また、「常識では考えられない場所にある」という立地に加えて、ストーリー性があるのも投入堂の大きな魅力だと生田さんは語る。
「投入堂が拝める最終地点のすぐ前に観音堂という、自然の洞窟内に建てられたお堂があります。参詣者はこの裏側の昼でも薄暗い空間を歩いて進むのですが、ここを“胎内くぐり”と言います。
暗くて狭い空間を通った直後だからこそ目にする投入堂がより有難みを帯びます。この物語性が素晴らしいといつも思いますね。」
この投入堂、もし現代の工務店が建てるとしたら一体いくらかかるのだろうか?