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ホリエモンにも若手官僚がヒアリング 国交省「政策ベンチャー2030」が描くタブーなき未来とは?

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公開日:2018.11.27 / 最終更新日:2018.12.20
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行政はPLANに時間をかけてDOに移れない

――次に興味深いのは古典派経済学からの脱却を提起した未来シナリオ⑤です。

未来シナリオ⑤「(不完全な)見えざる手」から「技術による全体最適」へ

「見えざる手」は、市場が十全に機能すれば全体最適が実現されるという経済学の基本定理を表現している。しかし、市場は現実の経済において、学問で理想化されているほどうまく機能していないことは周知のとおりである。

一方で、AI、スマートフォン、GPS等の近年の科学技術の進展を踏まえれば、精緻なプライシングや中央制御による財・サービスの配分計画を補完的に用いることによって社会の全体最適の実現に近づくことができる余地が、急激に拡大しているのではないか。

このため、交通や不動産など、国土交通省が、一定程度、市場のコントロールを担っている分野において、技術を生かすことによって、市場のパフォーマンスを上げていく政策が求められる。

中根 「見えざる手」は、市場が十全に機能すれば全体最適が実現できるという経済学の基本定理ですが、現実社会はそれほど理想通りには機能していません。

一方で、AI(人工知能)、ICT、スマートフォンなどの技術の進展を踏まえれば、そういった技術を使いこなすことで「社会の全体最適」の実現に近づける余地がより拡がってくるのではないでしょうか。建設、交通、不動産など、国土交通省がある程度市場のコントロールを担っている分野において、新しい技術を使って全体最適を目指せば、より良い地域や社会ができあがるのではないでしょうか。

――次は未来シナリオ⑥ですが。

未来シナリオ⑥「組織による肩書き」から「個人としての信用」へ

シェアリングサービスの利用者増加をはじめとして、個人の信用がプラットフォーム上で可視化される機会がますます増えていく中で、今後は、個人の資源を、組織を経由せずとも他者に直接提供できる社会に変わっていく。

この個人同士の資源のやりとりに、国も一主体として参加し、例えば、個人の遊休資源や余剰時間を活用する仕組みが考えられるのではないか。

中根 これからの社会は、多様な個人の生き方を支え、それを社会に活かす仕組みが求められるようになると思います。 キーワードは「個人としての信用」です。これまでは名刺交換すると「国土交通省の中根さん」「A建設のXさん」という会社や組織で信用を得てきました。

人生100年時代を迎えるにあたり、国土交通省やA建設を退職した後の人生を、どうデザインしていくかも大切になってきます。個々人が信用されないと、次のステージに進めない可能性もあります。今後、副業も増えていく中で、個人の能力や資源を、組織を経由せずとも社会に上手に活かす仕組みが必要になるのではないでしょうか。

――最後の未来シナリオ⑦では、行政のあり方自体に言及していますね。

未来シナリオ⑦「後追いの政策」から「アジャイル開発する政策」へ

世の中が大きく、激しく変化していく中、行政がそれを先取りできるようになるには、私たちの仕事の仕方をアジャイル(俊敏)にしていかなければならない。

PDCAサイクルにおけるPlanにこだわる余り、Do、すなわち実行に進まず、いわゆるPDCAが回り出していないという場面があるのではないか。

これを解決すべく、PDCAサイクルをまずDoから始まる、DCAPサイクルということを業務プロセスとして仕組み化することで、世の中の変化に対応できる行政にしていかないといけないのではないか。

中根 「後追いの政策」から「アジャイル開発する政策」へと行政の思考の変化に言及しました。アジャイルは“俊敏”という意味です。行政は政策の失敗を恐れ、PDCAサイクルでいう「Plan」の部分にこだわってしまう余り、Do、すなわち実行になかなか進むことができず、その結果「後追いの政策」になりがちです。

そこで、PDCAサイクルをまずは「Do」から始めてみる、Planを一部でも実行に移し、評価・改善を繰り返すことによって、変化に対応できる行政にしていくべきだと提案しました。

国土交通省「政策ベンチャー2030」のインフラ老朽化施策

――では、いよいよ「政策ベンチャー2030」の具体的な政策についてですが、インフラの老朽化の問題に焦点を当ててお聞きしたいです。

中根 まずはインフラの老朽化に関するデータとして、建設してから50年以上が経過するインフラの割合をご紹介したいと思います。

道路橋約40万橋のうち、建設50年が経過したのは、2017年12月時点で約23%ですが、2033年3月には約61%に達します。建設年度が不明の約30万橋については、割合の算出から除いています。

トンネル約1万本については、2017年12月時点で約19%が50年を経過していますが、2033年3月時点では約41%になります。こちらも建設年度が不明なトンネルは割合算出から除いています。

建設後50年が経過する社会資本の割合(国土交通省)

水門などの河川管理施設約1万施設については、2017年12月時点では約30%、2033年3月時点では約64%になります。

総延長約45万㎞の下水道管きょについては、2017年12月時点では約3%、2033年3月時点では約24%になる見込みです。

このように、高度成長期以降に整備されたインフラが今後一斉に老朽化することが見込まれています。一斉に老朽化していくインフラをどう計画的に維持管理・更新するかが課題です。

みなさんの中には、老朽化していくインフラの多くを国土交通省が管理していると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は、地方公共団体が管理しているインフラが多いんです。中でも、市区町村が管理しているインフラが多く、例えば、橋梁の68%は、市区町村が管理しています。

――市町村の土木技術職員を増やす必要があるのでは?

中根 インフラのメンテナンスを担う技術者の確保・育成は重要な課題です。全国の市町村の職員数の推移を見てみると、全体の職員数は平成8年度から平成27年度の間に約20%減少しているのに対し、土木部門の職員数は平成8年度の約12万5千人をピークに減り続け、平成27年度は約9万人と3割近く少なくなっています。

市町村における土木・建築部門系職員数の推移(国土交通省) 

技術系職員が1人もいないという市町村は約3割に及びます。市町村によっては、「技術者がいなくて困っている」という声も聞こえてきます。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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コメント(5)

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  • - 2018/11/27 20:59

    物凄く良記事

    >現役世代である私たちが”何もせずに静観する”ことは罪深い行為であると感じています

    この業界に携わっている身として非常に耳が痛い

    返信する 通報する
  • - 2018/11/27 23:00

    初耳。

    なんでこういうのニュースでやらないの?重要でしょ。

    返信する 通報する
  • - 2018/11/28 16:50

    率直にいいんじゃないでしょうか。
    まぁまだ具体的なところまでいっていないのでなんとも言えないですが、確かに静観しているのは死んでいるのと同じですね。
    ぜひ机の上の想定ではなく現実を踏まえて検討していってほしい。
    期待しています。

    返信する 通報する
  • - 2018/12/01 2:50

    国交省見直しました

    返信する 通報する
  • - 2018/12/20 15:26

    いいね、国交省。市をどうにかしてほしいです。

    返信する 通報する

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