下請のビルダー・工務店にも影響
ところでシェアハウスの実際の建設にあたって、ホーメストは直用というスタイルを採用していなかったようだ。エム・テックと異なる点は技術者がいなかった点だ。
ホーメストは、ホーメストグローバルネットを設立、全国のビルダー・工務店と技術・情報・ノウハウを共有するグループを形成していた。これが事実上の工事担当会社である。「本社には営業マン、総務関係者くらいで社員も23名ほどです。」(増田氏)
ホーメストが使っていた下請に対しては、「支払いはシェアハウスのオーナーから回収するからそれまで待ってくれ」と伝えていたという。しかし、裁判も長引き、下請に工事代金を払えなくなっている。
「下請は3月以降、どれだけ返してもらっているか分かりませんが、取りっぱぐれになったケースもあります。」(増田氏)
一定数、全国のビルダーや工務店に影響がありそうだ。実はシェアハウス問題では、ホーメスト以外でもシェアハウスオーナーに工事代金の支払いを求めた提訴や仲裁を申し立てている建築業者が複数ある。そのため、今後、シェアハウス問題はさらに拡大する可能性がある。つまり、第二、第三のホーメストが今後、破綻する可能性はあるのが現状。
一気にシェアハウスを大量に供給したため、不良債権化してしまった。たとえば、東京・足立区が区内のシェアハウスの実態を調査したところ、建設中を含めて313棟が建てられている。そこで足立区は、違法ビジネス転用防止のため独自規制を実施することを決定したばかり。しかも、スルガ銀行はシェアハウスオーナーに対して、1億円~3億円を貸しているが、こちらも不良債権化する可能性が高く、事実上棚上げになっている。
不動産業者には、投資用マンションとともにシェアハウスを保有しているところもある。規模的に売上100億円の不動産会社でシェアハウスに大きくのめり込んでいるところや取引している建設会社も今後、要注意だと増田氏は指摘する。
1社専属下請の恐ろしさ
今回のホーメストの破綻の教訓について増田氏はこう説明する。
「ホーメストの運営会社は2回倒産しても、ブランドとして残ったわけですから、その価値を大事にすべきでした。安易にシェアハウスの拡大に乗ったところに問題がありました。1社専属下請になると営業をしないから楽です。
ところで破産したエム・テックの1社専属下請は今大変なことになっているのではないでしょうか。今回も、スマートデイズの依存度を高めたホーメストは事実上、下請みたいなものです。“仕事が来るから会社としては安泰だ”と考える下請もおりますが、これは怖いことです。ですから、元請が潰れた時のリスクヘッジをするため、取引先は分散することが定石です。ところが売上を追求すると、安易な方に流れがちです。」
建設業界は実は1社専属下請が他の業界と比べて多い。割りがいい仕事に比重を置くことにより、売上を高める手法はあるが、1社専属下請の危険性はもっと周知されてもいいだろう。