鋼材の4つの基本事項
コンクリートと鋼材が相互に補完していることが分かったところで、次は鋼材に関する4つの基本事項も学んでほしい。
1.炭素量で性質が決まる
鋼材内の炭素が多ければ強度は高くなり、破断時の伸びが小さくなる。炭素量が多いと、靭性(ねばり強さ)は低くなり、加工や変形をしにくくなる。
炭素量は、一概に「多い→強い」とはならないことを認識しておいてほしい。以下の表1に、炭素量による鋼材の特性をまとめる。
炭素量 | 強度 | 破断伸び | 靭性(ねばり強さ) |
多い | 高い | 小さい | 低い |
少ない | 低い | 大きい | 高い |
表1 炭素量による特性
2.鋼材の弾性係数は全て同じ
後述するが、鉄は強度や伸び率(炭素量)が変わっても、弾性係数は同じだ。
「弾性係数」とは「材料の硬さを表す指標のひとつ」であって、「強度が高いと弾性係数も高い」というのは間違いだ。以下に、鉄筋の弾性係数値を示す。
鉄筋の弾性係数: E=200kN/mm2(もしくは、2.05×10^5 N/mm2)
3.「引張強さ」よりも、「降伏点または耐力」が大事
鋼材の伸び方の特徴を、図に示した。グラフの縦軸が応力を表し、横軸がひずみを表す「応力-ひずみ曲線」だが、難しいことではない。力(引張応力)を加えれば加えるほど、伸びてきて最終的には切れる(破断)、というのを模式的に表しているに過ぎない。
鋼材の伸び方には共通の特徴があるので、図で確認してほしい。
- はじめのうちは引っ張っても元に戻る。(比例限界・弾性限界)
- 降伏点が現れ(降伏棚)、じわじわと伸びはじめる。
- 伸びつつも強度は頂点を表す。(引張強さ)
- 限界まで伸びたら破断する。
4.降伏点や引張強度は、元の直径を使う
鉄筋は、伸びるとその分細くなる。破断時には元の鉄筋径よりも小さい断面になっている。直径を計測するのは試験をする前に行うことが重要だ。
フックの法則で引張強度や降伏点を求められる
弾性係数(E)が出てきたので、「フックの法則」についても触れておこう。これで、引張強度や降伏点を求めることができる。
σ=Eε(σ:シグマ・応力)(E:イー・弾性係数)(ε:イプシロン・ひずみ)
慣れない記号が出てくると、ついつい敬遠してしまいがちだが、中学で習う「比例の式:y=ax」と全く同じだ。比例定数aが、フックの法則では「弾性係数E」になっているだけで、「ある力(σ)で引っ張ったら、これだけ(ε)伸びました」ということだ。
「フックの法則」は、「弾性の法則」「ばねの方程式」などとも呼ばれることもあり、バネや輪ゴムをイメージしてもらえると理解しやすい。