鉄道模型のジオラマづくりで橋や土木に目覚めた
――先日、土木学会関東支部が主催した「どぼくカフェin Tokyo」(2018年12月)では、「マイ作業服」を持参して会場を沸かせていましたが、いつもあの格好で撮影しているんですか?
大村拓也 現場へ取材に行くときは必ず持っていきます。もちろんヘルメットもです。プロの人が現場で物を借りるのは、ありえないなと思うからです。自分の車には、トンネル用のプロテクター以外はほとんどの装備を積んであります。法改正で義務化されたフルハーネスタイプの安全帯も買わなければ…(笑)。
現場の人は、僕がどういう立ち位置で仕事をしているのか、必ずしも知りません。ですから、自前の安全装備を持っていくことで、自分が現場の安全と危険を熟知していることをいちいち言葉で説明せずとも、理解してもらえるようにしているんです。
――マイヘルメットはトンネル用の「全周つば付き」なんですね。
大村 大学は土木工学科で、シールドトンネルの研究室にいました。トンネル屋のなりそこないですけど、それなりのプライドがあるんです(笑)。自分が土木の写真を撮るようになった原点でもありますし。
――土木出身で、卒業と同時にいきなりカメラマンになったそうですが、そもそも、土木に興味を持つようになったはなぜですか。
大村 入り口は鉄道です。父が鉄道好きだったうえに、その父を鉄道好きに仕込んだ張本人は祖父でした。そして、父方ほどではありませんでしたが、母方の祖父もまた。ですから、僕も当然のように鉄道好きになりました。
小学生の頃、夏休みになると、父方の祖父の家で鉄道模型「Nゲージ」で遊び、母方の祖父には、鉄道系の博物館に連れて行ってもらうのが定番でした。中学で鉄道研究部に入り、Nゲージを走らせるためにジオラマを自分で作るようになったのですが、今となって思えば、それが土木との最初の出会いだったのではないかと思います。
部活の同級生がみんな一眼レフを持っていて、僕も伯父から譲ってもらった一眼レフのカメラで写真を撮り始めたんですけど、鉄道写真って、列車と風景と合うところが撮影スポットになるんです。例えば旧余部鉄橋の赤いトレッスル橋を山陰本線の列車が渡っている写真がよくあるでしょう。鉄道雑誌で写真を見たり、実際に現地に行って写真を撮っていると、「あの風景をジオラマで再現したい」と思うわけです。
でも、多くの場合、ジオラマづくりって、目的と手段が土木と逆なんですよね。実際にある風景をモチーフにしてジオラマを作ることもあるのですが、多くの場合は橋やトンネルがある風景を作りたくて、ジオラマを構想する。
「川があるから橋を架ける」じゃなくて、「橋を架けるために川を作る」。だから、実際の風景を見ながら、どうしてそういう風景になったのか、観察したり、想像するようになった。
――地形の成り立ちを知らないと、本物らしいジオラマがつくれなかった。完璧主義ですね。
大村 自分のお気に入りの風景を再現するにはどうしたらいいのかなと、授業中もひたすら考えていました(笑)。山自体は発泡スチロールのブロックから削り出すのですが、線路を敷く路盤は慎重に成形しないと、模型とはいえ、脱線の原因にもなる。そこで、僕は短冊状に切った段ボールをボンドで貼り合わせて、路盤を作っていました。
Nゲージの勾配って、せいぜい5%が限界なんですが、厚さ3mmの段ボールを使う場合、線路が6cm進むごとに重ねる段ボールを1枚ずつ増やしていくことで5%の勾配の路盤を作ることができます。
当時は「盛土」という言葉を知らなかったのですが、やっていることは土工と、施工管理そのものでしたね。
ジオラマづくりの一環で、模型メーカーが製品化したプラモデルの橋ではなく、自分でプラチック板やケント紙を切り出して、実存する橋を模型化することに挑戦したのですが、技量と知識が追い付かず、「未成」に終わりました。
それで、もっと橋のことを知りたいと思うようになり、高校2年になって進路を考えるとき、建築学科へ進んだ先輩に「橋をやりたい」と相談したら、「それは建築ではなくて土木だよ」と言われて、初めて「土木」という言葉を認識したんです。
いつも読ませていただいております。大村さんはこういうお方でしたか。若くてびっくりしました。これから記事を読むのがますます楽しみになりました。応援しています。土木老人より。
超共感しました。。
・写真の見せ方も、ワイドレンズで下から煽れば、誰が撮っても大きくドーンと写るけど、それって嘘だよね、と。現場を知っている僕からすると、もうそういうの、コテコテすぎてちょっと耐えられない。土木の表現としては脂っこいんです(笑)。
思想に裏付けされた写真はひと味違う!
バックホーがボックホーになってますね・・・
ご指摘ありがとうございます。修正させていただきました。編集部より
日経コンストラクションを購読しているのは大村さんの記事を読むためです。
大村さんの考え方を知ることができて面白い記事でした。
大村さん、好きです。
かっこいい生き方だな
読んでたらカメラ欲しくなってきた
ゼネコンに行きそうなのにフリーを選んだのがスゴイですね。
日経コンストラクションの写真にはこのような背景があったのですね。
素敵です。
大村さん、こんなところに!
おもろい!