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『日経コンストラクション』の表紙撮影を10年以上。それでも僕が「土木写真家」を名乗らない理由【大村拓也】

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公開日:2019.04.04 / 最終更新日:2019.04.07
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「記事とセット」の土木専門誌の仕事は痛し痒し

――土木専門誌「日経コンストラクション」の仕事をするようになったのは、いつ頃からですか。

大村 師匠と出会ったのと同じ頃、大学の研究室の先輩に、同級生だという同誌の記者を紹介してもらいました。

「写真を撮りたい」と言ったのですが、「できれば記事とセットで」と言われてしまったんです。文章を書くつもりはまったくなかったので困りましたが、編集部に詰めて、書き方を学びました。

「写真を撮りながら、文章を書けるなんてすごいね」とよく言われます。聞こえはいいですが、1本の記事に割く時間は写真を1とすると、文章を含む誌面の作成は9です。僕の能力の問題ですが、記事を抱えてしまうと、それ以外の写真はほとんど撮れません。

もちろん、「日経コンストラクション」の看板があるからこそ、いただけた写真の仕事も少なくありませんので、正直なところ、痛し痒しです。

――写真と文章の両方を完璧に仕上げるのは、大変でしょうね。

大村 学生時代、「写真とことば」(写真評論家・飯沢耕太郎著)という本を読んで、「よき写真家は、よき文章の書き手でもある」であることを知り、感銘を受けました。

ですから、最初は「これも修行のうち」と思っていましたが、当然のことながら、ビジネス誌である日経コンストラクションの記事は、「写真家」が書くことを求められていません。写真エッセーでは、ありませんからね。

真に写真家として独立するならば、いったん記事を書くことをやめる必要があると思っています。それでも撮影の依頼をいただけるのであれば、と考えるのは、ずうずうしいでしょうか??

――自立したスタンスの表明、潔いです! 依頼が来るかどうかは別として(笑)。これまでで一番、よく撮れた現場写真って、どれですか。

大村 「よく撮れた」と思うのは、規模が小さい現場のほうが多いですね。大きい現場って、取材する前から撮るべき画がほぼ決まっちゃってるんですよ。あくまでも日経コンストラクションで必要とされている、施工技術を説明するための画ですが。

現場に行ってみないと状況がわからない方が腕が鳴ります。中でも、うまく表現できた、と納得できるものになったのが、秋田の農業用水トンネルの補修工事の現場です。

覆工背面にできた空洞を5kmも長距離圧送した充填材で埋める工事なんですが、農業用水トンネルは点検用の照明もなく、工事用の仮設の照明がところどころに灯っているだけで、まだ施工していない範囲は奥まで暗い穴が続いている。その中で、人がやっと立てるほど天井の低いところで注入作業をしている場面です。

写真でトンネルの距離を表現することは非常に難しいのですが、作業している場所の前後に暗闇があったことで、長いトンネルの一点にスポットライトを当てるような状況が演出されました。

秋田県の第二田沢幹線用水路大相沢トンネル補修工事。狭い断面の暗いトンネル内で長距離圧送した充填材を注入している様子をリアルに映し出した。2014年12月撮影

「重厚長大」だけが土木じゃない

――大村さん流の土木写真の撮り方というのは、どういうものでしょう。

大村 僕は、媒体によってチャンネルを変えるべきだと考えています。土木に興味がある一般の人と、プロの土木技術者が同じ視点で土木構造物を見ているはずがありません。日経コンストラクションなら、読者はプロの土木技術者なので、その人たちが「ここを見たいだろうな」というところを見せる撮り方をする。

例えば、橋なら断面の様子がよくわかるように、とか。重量感や桁の厚さ・薄さなども、実際に見た感じがなるべくそのまま伝わるように配慮しています。いわば、「現場“見学”代理人」のスタンスですね。

「よその現場では、今、こういう取り組みをしている」ということを直接、その現場へ見学に行かなくても、共有してもらえるようにするのが記事の狙いです。そのため、規模が大きいからといって、簡単に自分が現場に圧倒されてはいけない。

――確かにそれは、土木を学んだ人でないと撮れない写真ですね。実物に忠実に撮る、というと具体的にはどうするのですか。

大村 土木って、重大チョウコウ? 長大重厚? あれ? なんだっけ。

――「重厚長大」です。

大村 そう、「重厚長大」っていうのをすごく売りにするじゃないですか。一般の人に土木を知ってもらうには、手っ取り早いのかもしれませんが、自分の立ち位置はそこではありません。土木の原点って、もっと身近なものであって、必ずしもスケールは関係ないはずですよね。

「ドブ板土木」っていうか、ドブ一つでも立派な土木。もちろん、荒川放水路をつくっちゃうっていうのも土木ですけどね。

だから、写真の見せ方も、ワイドレンズで下から煽れば、誰が撮っても大きくドーンと写るけど、それって嘘だよね、と。現場を知っている僕からすると、もうそういうの、コテコテすぎてちょっと耐えられない。土木の表現としては脂っこいんです(笑)。

「画」として見せるなら面白いのかもしれないけど、土木構造物として撮る写真はそうじゃないよね、と思う。

震災復興のかさ上げ工事のため、岩手県陸前高田市に仮設されたベルトコンベア。「自然の風景よりも工事の風景に私が惹き付けられるのは、そこにある技術者の考えに共鳴するからだろう」と大村さん

――コテコテじゃないように撮るために、何か工夫を?

大村 これはテクニックの話なんだけど、僕、ワイドレンズ使うときはいたずらに見上げないです。見上げちゃうと、上がすぼまって奥行きが出すぎちゃうんですよね。過度に強調されてしまう。そうならないように、必ずカメラを水平にして撮ります。

「見上げない」というのは、「構造物と正対する」ということです。写真を見た人が、その中からその構造物の特徴を読み取れればいい。橋を架けたいという1次元の要求に対して、2次元の図面に整理して、最終的に3次元の構造物に仕上げて、形を保つことが土木の仕事だとすると、僕の仕事は3次元の構造物や技術を、イメージとして2次元に置き換えることだと考えています。ですから、縮尺の違いはあるけれど、「嘘・大げさ・紛らわしい」表現は慎むべきだと思っています。

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超共感しました。。・写真の見せ方も、ワイドレンズで下から煽れば、誰が撮っても大きくドーンと写るけど、それって嘘だよね、と。現場を知っている僕からすると、もうそういうの、コテコテすぎてちょっと耐えられない。土木の表現としては脂っこいんです(笑)。

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この記事を書いた人

三上 美絵
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ゼネコン広報部に10年勤務した後、フリーライターとして独立。広報セミナーの講師や社内報コンペの審査員なども。古くて小さくてかわいらしい土木構造物が好き♡
『日経コンストラクション』の表紙撮影を10年以上。それでも僕が「土木写真家」を名乗らない理由【大村拓也】 『日経コンストラクション』の表紙撮影を10年以上。それでも僕が「土木写真家」を名乗らない理由【大村拓也】

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コメント(10)

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  • - 2019/04/04 16:48

    いつも読ませていただいております。大村さんはこういうお方でしたか。若くてびっくりしました。これから記事を読むのがますます楽しみになりました。応援しています。土木老人より。

    返信する 通報する
  • - 2019/04/04 18:08

    超共感しました。。

    ・写真の見せ方も、ワイドレンズで下から煽れば、誰が撮っても大きくドーンと写るけど、それって嘘だよね、と。現場を知っている僕からすると、もうそういうの、コテコテすぎてちょっと耐えられない。土木の表現としては脂っこいんです(笑)。

    返信する 通報する
  • - 2019/04/04 23:42

    思想に裏付けされた写真はひと味違う!

    返信する 通報する
  • - 2019/04/05 16:47

    バックホーがボックホーになってますね・・・

    返信する 通報する
    • 2019/04/07 23:39

      ご指摘ありがとうございます。修正させていただきました。編集部より

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  • - 2019/04/09 7:45

    日経コンストラクションを購読しているのは大村さんの記事を読むためです。
    大村さんの考え方を知ることができて面白い記事でした。
    大村さん、好きです。

    返信する 通報する
  • - 2019/04/12 12:50

    かっこいい生き方だな
    読んでたらカメラ欲しくなってきた

    返信する 通報する
  • - 2019/05/15 17:16

    ゼネコンに行きそうなのにフリーを選んだのがスゴイですね。

    日経コンストラクションの写真にはこのような背景があったのですね。

    素敵です。

    返信する 通報する
  • - 2019/06/05 18:02

    大村さん、こんなところに!

    返信する 通報する
  • - 2019/06/27 15:28

    おもろい!

    返信する 通報する

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