安藤ハザマとコラボ「アクアカーテン」で建設業に参入

「最初はコンクリートのことは何もわからなかった」と笑う森島氏
――「プチプチ」と建設業は接点がなさそうですが、参入のきっかけは?
森島 川上産業が製造・販売している「プチプチ」は、引っ越しの時にお皿が割れないように包んだりして使用するもので、正式名称は「気泡緩衝材」と言います。
気泡緩衝材は世の中になくてはならないものですが、一方で今後大きく拡大することのない包材市場の展望を危惧していました。そこで「プチプチをほかの用途にも転用できないかな」と考えを巡らせていたんです。
そんな折、今から9年前になるのですが、間組さん(現・安藤ハザマ)から「プチプチをコンクリートの養生に使いたいんだけど」という提案いただきました。当時は、コンクリートのことなんてなんにも知らないので、本当に建設現場でプチプチが役に立つのか半信半疑でした。
ただ、元々、北海道や東北などの寒冷地や冬期の工事現場では、現場の方がホームセンターなどで「プチプチ」を買ってきて、養生中のコンクリートに巻いたり貼ったりして使用しているという話を聞いていたんです。なるべく費用をかけずに、コンクリートの品質を向上させるための現場の工夫ですね。
それから、私自身もコンクリートについて学びながら、間組さんとの共同研究が始まり、コンクリートの給水養生工法「アクアカーテン」を開発しました。
――アクアカーテンはどんな技術?
森島 アクアカーテンは、コンクリート表面にプチプチを張り付け、そこに水を流して湿潤養生するものです。トンネル覆工コンクリートの施工に特化した技術で、毎年20本を超えるトンネルで使用されています。
この技術の肝は、「二層品」のプチプチです。ちなみに、プチプチの平らな面を「バック」と呼び、丸く出っ張っている面を「キャップ」と呼びます。このバックとキャップからできているプチプチを「二層品」と言います。

誰もが一度はお世話になったことがある「プチプチ」(二層品)
コンクリートの表面にプチプチの「キャップ」面をくっつけ、コンクリートとプチプチの間の空気を吸引して負圧にすると、コンクリート面にプチプチがぴったりくっつきます。そして、プチプチのキャップによってできた隙間に水を流すと、コンクリート前面に均一に水膜ができ、水中養生と同じ養生環境になるという原理です。
コンクリートの養生は、湿潤と保温が2大テーマです。アクアカーテンはその両方を同時にこなせる高度な技術なんです。
あるゼネコンが開発した技術を、他のゼネコンも使用することは少ないですが、アクアカーテンは安藤ハザマ以外の大手ゼネコンも使っています。これは珍しいことだと思います。
コンクリート表面に直接貼れるプチプチ「モイスチャータックプチ」
――順調にアクアカーテンは現場に浸透しましたか?
森島 問題もありました。アクアカーテンは、施工指導も必要だったんです。川上産業はプチプチの提供はできても、施工指導まではできません。
そこで、「プチプチにコンクリート用粘着剤をつけて、直接貼れるようにしたら便利なんじゃないか」と考えてできたのが、進化したアクアカーテンである「モイスチャータックプチ」なんです。
モイスチャータックプチは施工指導が要らないので、現場で自由に貼っていただけます。

「モイスチャータックプチ」の見本。切ってサイズを調整し、養生中のコンクリートに直接貼れる
――モイスチャータックプチは、アクアカーテンと何が違うんでしょうか。
森島 モイスチャータックプチは、先ほど紹介した二層品のプチプチのキャップ側に、さらにもう1枚シートを乗せた「三層品」と呼ばれるものに、専用の糊(粘着剤)をつけたものです。
「施工の神様」の読者には釈迦に説法ですが、コンクリートは乾燥して固まるのではなく、セメントの成分と水が化学反応することにより固まります。そのため、適切な温度と湿度の下で養生されることが理想です。

隙間なく貼られた「モイスチャータックプチ」がコンクリートを保水・保温する / 川上産業
モイスチャータックプチは、三層からなるプチプチがつくる空気層がコンクリートを保温し、表面からの水分蒸発も抑制するので、効果的に保水養生することができるんです。圧縮強度、透気係数・吸水係数ともに向上し、外気の急冷却による表面ひび割れの抑制にも効果的です。
しかも軽量で、簡単にコンクリート面に貼り付けることもできるので、施工の省力化にも繋がります。
――モイスチャータックプチは独自で開発したんですか?
森島 実は、大手化学メーカーの3Mから共同開発のお誘いがあったんです。3Mが販売しているコンクリート保水養生
それで何度か試作を繰り返してみたのですが、プチプチと3Mのテープでは使われている樹脂が異なっていて、熱でくっつかなかったんですよ。プチプチはポリエチレン(PE)ですが、3Mのテープには別の樹脂が使われていました。
それなら「プチプチに3Mと同等の粘着剤を使用してコンクリートに貼ってみよう」ということになり、実際の現場でも施工してみましたが、費用の面で頓挫しました。
結果的には、これがモイスチャータックプチの着想に繋がり、川上産業が独自で開発することになったんですけどね。
初めて知った
ペタペタ貼るの楽しそうだな