インフラ大補修時代における「コンクリート維持管理の専門家集団」
――ケミカル工事の創業は?
國川正勝 ケミカル工事は1974年に技術者が共同で立ち上げた会社です。コンクリート構造物の効果的な維持管理、補修・補強技術の確立を目指して創業しました。
創業当時のケミカル工事は、ベンチャー的な要素を多分に含む会社で、当時の技術者たちはこんなに大規模な会社になるとは思っていなかったでしょう(笑)。
今は、コンクリート構造物の調査診断から設計・施工までを一貫して実施できる施工会社として、「コンクリート維持管理の専門家集団」と認知していただけるようになりました。
――ケミカル工事の強みは?
國川正勝 発注者や大学、ゼネコンとの共同開発も進めており、全てのコンクリート構造物の調査・診断・補強・補修に関する工法・技術を提供できるところにあります。「橋梁プロテクト技術研究会」という会も設立しています。
社会インフラは「つくる時代」から、維持補修する「大補修時代」を迎えていますが、ケミカル工事はコンクリート構造物のさまざまな劣化状況に対応できるので、「インフラ大補修時代」を支えていきたいと考えています。阪神淡路大震災や東日本大震災のときには、復興の一翼も担いました。
阪神淡路大震災の復興工事から、全国展開へ事業拡大
――阪神淡路大震災の時は大変だったのでは?
國川正勝 現在のケミカル工事の従業員数は約100名ですが、当時は23名でした。幸い23名全員無事でしたが、モービル車が海に投げ出され、生コン工場も大ダメージを受け、クルマも被災地にたどり着ける状態ではありませんでした。
そんな中、行政機関から鉄道と道路を早期に復旧復興してほしいという要請がありました。余震も続き、不安な状況が続いていましたが、われわれは現地入りし、鋼板が運べない状況でしたので、炭素繊維による柱の補強を実施しました。
炭素繊維は、当時まだ試験的な導入に留まっていましたが、この阪神淡路大震災での展開によって炭素繊維による補強は一気に進みました。
阪神淡路大震災での復旧・復興工事でケミカル工事の技術が認められ、全国のゼネコンから、インフラメンテナンス工事に当社を指名していただけるようになりました。当社の全国展開はここからスタートしました。その時、私は心から「神様はいるものだな」と痛感しました。
――全国展開する際、技術者は足りていたのでしょうか?
國川正勝 少子化に伴い技術者が年々減少することは当然のことで、どう解決していくかはケミカル工事でも喫緊の課題です。
当社では、2つのことを並行して実施しています。1つは、施工作業の機械化施工です。機械やロボットができることは積極的に技術開発を行い、人力作業を減らすことで作業効率を向上させるとともに安全性も向上させる試みです。
ただし、補修補強の分野は大規模施工となるケースが少ないこと、狭隘部での作業が多いことなど、機械化施工するには課題も多く存在します。
もう1つは、魅力的な職場環境を創出することです。どちらかというと補修補強は地味な分野ですが、新設構造物を造る醍醐味と違い、今ある構造物をどう延命化し将来に持続させていくかを、ニッチな技術や新材料の開発でやりがいのあるビジネスに変えていくことです。
また、建設業界が抱えている労働環境の改善も当然考えていく必要があります。企業も労働者も互いにWin-Winの関係を構築していける環境が今後重要と捉えています。
——ケミカル工事の社風、雰囲気はどんな感じですか?
國川正勝 ベンチャーの気質がベースにありますから、やりたい事ができる、言いたい事が言えるという土壌があります。
会社としても、従業員とその家族が幸せに暮らせるように、という考え方を第一としています。
そもそもメンテナンスしやすい構造物を最初から作って欲しいと思うわ。