中小・零細の建設会社が享受するM&Aのメリット
――中小・零細企業が大手の傘下に入るメリットは?
西田 店舗企画、設計・施工のラックランドの傘下に入った企業がいい例ですね。ラックランドは取り扱う物件が増えていくことで、メンテナンスの強化、短納期・夜間工事、休日工事に対応しなくてはならなくなっていました。
これにより電気・設備・管工事などを内製化する必要に迫られたため、小回りの利くニイクラ電工をM&Aをしています。ラックランドという大手と組むことで、譲渡企業である電気工事のニイクラ電工も売り上げが2億円から5.2億円にアップしました。さらに、大手のリクルートの力を借りて、採用がうまくいくようになり、5名従業員が増えました。
同じく、石川県で管工事を営む木戸設備工業は、ラックランドとともに、地元プロバスケットボールチーム「金沢武士団」のスポンサー企業に就任しました。上場企業の子会社化で、独立性を保ちつつも、顧客満足度の向上を強めています。
東京五輪後は「メガプラットフォーム企業」が生き残る
――ずばり、これから建設業界のM&Aはどうなっていきますか?
西田 これから建設業者の淘汰はさらに厳しくなってきます。人材獲得も簡単になることはありません。
そんな時代に会社が20年、30年と存続していくためには、採用を強化することは無論、育成もしっかり行い、さらにその人材が活躍するフィールドを与えていくことが求められます。
この3点に取り組まなければ、せっかく採用しても辞められてしまい、事業継続が困難になるからです。
コムシス・ホールディングスの事例を提示しましたが、建設業は「メガ・プラットフォームの時代」へと転換していくでしょう。
――「メガ・プラットフォームの時代」とは?
西田 今までは、土木なら土木専業の工事を受注していた企業も、これからは地域や顧客にとって多くの提案ができる体制を整える必要があります。
つまり、土木専業で生き残るのではなく、ホールディングス化のもとで、電気、衛生、空調、メンテナンス、廃棄物処理、機械設置、デジタル技術、データ、ガス、土木建築とすべての社会インフラに対応できる「メガ・プラットフォームグループ企業」が建設業界の覇権を握っていく時代が到来します。
たとえば、神奈川県に電気・空調・給排水工事のあしだ冷熱という会社があります。この会社は、電気工事を中心に高い品質の施工をしています。
あしだ冷熱は素晴らしい経営をされていますが、従業員に将来の活躍のフィールドを提供するために、東京ガスグループで総合設備工事会社のライクスにグループ入りしました。大きな企業にグループ入りすると総じて福利厚生もしっかりして、社員も幸せになります。
建設業界は2020年にかけて大きな波が来ます。譲渡希望情報が多く集まる会社と持ち込まれない会社の差が鮮明になるのではないでしょうか。そして「メガ・プラットフォーム企業」のような提携の意義がますます重要になって来ると予測しています。
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