木造軸組工法を20日間みっちり研修
――新たにフィリピン人技能実習生の研修事業も始めた。
岡田 繰り返しになりますが、岡田工業の本業は鉄筋加工事業です。
ただ、人手不足が深刻化するにつれ、ハウスメーカーや工務店から「建て方ができる人材を紹介してもらえませんか?」「いっそのこと御社で建て方もやりませんか?」という問い合わせも寄せられるようになりました。
今や、畑違いの鉄筋メーカーにも相談が来るぐらい職人が足りていないんです。
――職人の高齢化も進んでいますしね。
岡田 ハウスメーカーや工務店は、高齢化した職人に対して、建物の内部の仕上げ材や取付け作業はさせても、墜落・転落の危険が伴う足場にのぼる高所作業はさせないところが増えています。
高所作業などはやはり若い職人にお願いしたいところですが、その若い人が減ってきているのが問題なんです。
そこで、すでにフィリピンのCADセンター会社が軌道に乗りつつあったので、その人脈を活かして外国人技能実習生の研修にもフォーカスしました。
――どのような研修システム?
岡田 研修では、ハウスメーカーや工務店から要望が多かった「木造軸組工法」の建て方を座学や実地で学べるシステムを採用することにしました。
大工道具は各国によって微妙に異なるので、ノコギリ一つとってもすべて日本で使用する道具と同じものを使っています。
資材も日本でプレカットしたものをフィリピンに運んで、実戦さながらに木造軸組工法を20日間みっちりと教えます。
――誰が指導している?
岡田 日本人技術者が、指導員として研修センターに常駐しています。加えて、フィリピン人スタッフ1名がサポート役として付いています。
日本の建築技術は海外でも人気
――フィリピン人技能実習生は、来日してすぐ即戦力になるのでしょうか。
岡田 率直に言うと、来日したばかりの技能実習生だけで木造軸組工法の建て方をいきなり組めと言っても難しいですよ。
ただ、どういう流れで仕事を進めるのか、何の道具を使うかといった知識は彼らの頭の中にしっかり入っています。
現地での研修では、7回ほど建物を建てては解体する作業を繰り返します。なので、来日して日本人大工と数回一緒に作業すれば、日本人の親方1人と実習生で建て方を組めるようになりますよ。
ある分譲ハウスメーカーは、建て方専門工事チームを結成し、日本人1人がフィリピン人技能実習生6名~8名を統括しています。
この実習生を2チームに分割し、3名~4名の技能実習生がそれぞれ1棟ずつ、1日で2棟建て方を完成します。
職人は確かに高齢化していますが、保有している知識や技能を伝承することはできます。なので、高齢の職人の活躍の場所はまだまだあるんです。
日本の熟練の職人と若くてバリバリ動けるフィリピン人技能実習生のタッグは、いい効果を生んでいます。
――2×4(ツーバイフォー)工法の研修も行っている?
岡田 木造軸組工法と比較すると2×4工法のほうが簡単なので、取り入れようと思えばできますよ。
ちなみに、フィリピンは海外へ出稼ぎする文化があるんですが、出稼ぎ先の一つにニュージーランドがあります。
今、当社では木造軸組工法の研修をして、日本に送り出していますが、将来的にはニュージーランドに普及している2×4工法や2×6(ツーバイシックス)工法のトレーニングを行って、ニュージーランドに送り出すことにもチャレンジしていきたいと考えています。
事実、技能実習生がフィリピンに帰国して、母国で活躍したくても、日本で得られたスキルを活かすことができる場が少ないのが実情なんです。これはかなりもったいないことですよね。
日本の高い技能・技術や、厳格な品質管理を学んだフィリピン人実習生は、諸外国でも人気があります。
なので、日本で学んだスキルを活かしたい実習生卒業生と、その人材を欲している海外企業をマッチングし、日本の高い品質管理・技能を学んだ人材を別の国に送り出していきたいですね。