30℃の部屋は暑いのに、30℃の風呂は冷たい理由
――空調服の着想はどこから?
市ヶ谷 二つのヒントがありました。
一つ目は、水です。エアコンや冷蔵庫といった実用的な冷却装置は、基本的に液体の気化熱を利用しています。
しかし、冷蔵庫やエアコンに冷媒として使用されている代替フロンは、温室効果ガスを増加させますし、有害なので捨てるわけにもいきません。ただ、水なら環境負荷も無く安価です。
二つ目が、人の温度の感じ方です。
30℃の部屋は暑いのに、30℃の風呂は冷たいですよね。同じ30℃なのに、どうして感じ方に違いがあるのか知っていますか?
熱伝導率の差が理由なんですが、空気は密度が低く、熱が伝わりにくい性質があります。そのため、体表面の熱が空気に発散されず、暑く感じるんです。
逆に、水は密度が高く、体温がお湯に逃げていきやすい。普通体型の日本人の皮膚温は約33℃なので、30℃のお湯に熱が放出され、冷たく感じます。
つまり、身体付近の空気を皮膚温度より低くできれば、暑さを感じないわけです。
この二つのヒントから、水を使用した環境負荷の小さいクーラーを開発しようと思いたったわけですが、「そもそも部屋全体を冷却する必要はないな。人が涼しく感じられればいいんだから」と方針を転換し、着ると涼しい服の開発に着手しました。
人間には高性能なクーラーが備わっている
――一番最初に作った試作品はどんなもの?
市ヶ谷 タンクに貯めた水をポンプとパイプで身体に散布し、その水をファンで流した風で気化させる水冷服を試作しました。
実際に着てみましたが、パイプだらけで異様な見た目でしたね。これを着て電車にも乗ってみたんですが、周囲からは変な目で見られました(笑)。しかもタンクから水が漏れ、ズボンの前側が濡れたりして、このままではちょっとまずいなと(笑)。
涼しいことは涼しかったんですよ。ただ、気温が低いと必要以上に寒くなってしまい、逆に気温が高いと蒸れてしまって。温度調節がうまくいかなかったので、製品化には至りませんでした。
――今の形になったきっかけは?
市ヶ谷 わざわざ水を散布しなくても、暑いときは人間から汗という水が出ることに気付いたんですよ。
人間には元々、高性能のクーラーが備わっています。気温が皮膚温を超える33℃以上になると、適正な体温を保つために脳の体温調整中枢から必要な量の汗を汗腺から分泌し、汗の気化熱で身体を冷却しようとします。私は、これを「生理クーラー」と呼んでいます。
この汗をすべて気化できれば、脳の指令通りの皮膚温になります。しかし、体の周囲の空気は体温で温まり、湿度も高くなっていくため、汗は気化しにくくなります。
すると、身体を冷却できないので、脳はさらに汗を出そうとします。熱中症になるのは、このスパイラルにより身体から水分が奪われるためです。
つまり、身体の表面にまとわりつく温度と湿度の高い空気を外気に置き換えることができれば、汗が気化できるようになり、涼しくなるんです。うちわと同じ原理ですね。
こうして、ファンで服の中に外気を送り込む空調服の開発が始まりました。
――最初から今の形だった?
市ヶ谷 最初は「ファンを服に付けるなんて格好悪いだろう」と、パソコンの冷却に使うような小さなファンを4つ付けただけのものでした。今の空調服の100分の1程度の風量しか得られず、汗をすべて気化させることはできなかったですね。
ただ、この試作品から面白いことも分かりました。当時の社員に、夏になると汗臭が強くなる人がいたんですが、モニターとしてこの試作品を着てもらうと汗臭が消えたんです。
汗臭は、身体の表面に存在する常在菌が汗によって繁殖してニオイとなります。試作品の風量は微量でしたが、この社員は事務職で汗の量が多くなかったのですべて気化させることができ、菌が繁殖しなかったんです。
汗臭を消す服を目指していたわけではないですが、ファンの空気で汗を気化できるということは証明できました。
その後、十分な風量を得るためにファンを大きくするなどの改良を重ね、着想から7年経った2004年に現行モデルの空調服が完成しました。株式会社空調服を立ち上げ、有償で試作品の販売も始めました。
――当時の反響は?
市ヶ谷 その見た目もあってか、多くのメディアから面白い商品だと取り上げてもらいました。メディアを見て購入される方も多くて、初年度は7,000着が完売しました。
ただ、世の中に存在しなかった製品なので、買うほうも売るほうも難しく、なかなか思うように普及していきませんでした。
発売から3年が経った2007年には、銀行に融資を断られて資金がショートし、倒産の危機もありましたね。
元ソニーの技術者魂が感じられる素晴らしい記事でした。
自分も業界は違いますが、同じ技術者として襟を正していきたいですね。
この間、最寄り駅で空調服を着て歩いている人を見たけど、ザ・作業着って感じでした。
まだあれじゃ買えないなーと思ってましたが、いろんなデザインが増えてるんですね。
探してみよう。
フェス行ったら意外と着てる人いたわ
NHKで番組を見ましたが、特許訴訟問題に出てきたS社という会社ですが、いったい何者なのでしょうか。
関係の無い私でも、ハラワタが煮え繰り返るようで、すごく悪い物でもみたような気分です。
こんな常識のない会社を、ほっておいてはいけません、また新たな被害者が出るよう気がします。
ぜひこの会社を世間 に公表すべきです、出来れば産業界からドロップさせるべきです。
空調服は私が先に発明したはずなのにな。私が24歳ぐらいに発明した。その頃にはインターネットになかった。