マラソンは建設業のイメージにつながる
藤本 それはさておき、マラソンに協賛すると、会社名が選手ゼッケン、ゴールテープ、インタビューパネルなどに掲示されるほか、大会広告にも記載されます。それだけでもかなりの露出が期待できます。
マラソンの模様はフジテレビ系列で全国中継されるわけですが、冠スポンサーということで、中継番組内で600秒間のCM枠があります。30秒CMが20本ですので、かなり大きな枠です。
中継中にも「奥村組スポーツスペシャル、大阪国際女子マラソン」と表示、読み上げもあるんです。競技場入り口付近には自社ブースを設置でき、自社技術のアピールもできます。知名度などを上げるには、絶好のチャンスだと考えました。
これらのアピール効果を含め、会社に諮ったわけです。ポイントは3つで、まず大阪のビックイベントだということ。大阪に本社があって、社長が一般社団法人大阪建設業協会会長(当時)である奥村組をアピールする絶好の場。大阪を盛り上げたいというメッセージにもなる。
2つ目がマラソンには健全なイメージがあることに加えて、スタートからゴールを目指すマラソンは、着工から完成までのドラマを持つ建設業のイメージにつながる。
最後が女子マラソンであること。女性活躍を推進する奥村組のCSR方針にも通じる。
――会社として大きな決断だったでしょうね。
藤本 正直、ダメもとでした。「中途半端はあかんぞ」と言われたものの、どれぐらいのレベルまで認めてもらえるのかはかりかねていたからです。
社内ではいろんな意見がでましたが、最終的に「やろう」という話になったんです。協賛契約は4年間です。大阪国際女子マラソンへの協賛は、当社の広報活動にとって、大きな転機になりました。
産みの苦しみの末、コンセプトは「建設が、好きだ。」
――そこからCMづくりなど具体的なプロジェクトに入っていったと。
藤本 そうです。マラソン協賛は決定しましたが、安心するのもつかの間、「テレビCMをつくる」という大きな仕事が残っていました。
当社はこれまでにテレビCMをつくったことはありませんでしたが、「どうせCMをつくるなら良いものをつくろう」ということで、大手の広告代理店を入れて、コンセプトづくりから始めました。
コンセプトは「当社の企業メッセージやイメージを表現する」、「建設業界の魅力を伝える」、「同業他社のイメージに埋没しない」としました。当時、建設業界でテレビCMをしていたのは、清水建設さんぐらいでした。
同業他社のコーポレートメッセージなどを見ると、「スケールの大きなものづくり」とか「世の中に貢献する」みたいな、表現は異なるものの、だいたい同じような発信をしていました。当社もそうでした。
「他社と同じコンセプトでCMをつくっても埋没する」、「CMのアプローチを変えないと、視聴者の印象に残らないんじゃないか」と、いろいろ頭を悩ますことになりました。
3ヶ月ほどディスカッションを繰り返しました。広報活動は、当然自社のPRのためですが、そのためにも建設業界全体のイメージアップを考える必要がありました。
――産みの苦しみですね。
藤本 「建設という仕事に真剣に取り組める原動力はなにか」を突き詰めていくと、「それはこの仕事が好きやからやろ」という話になりました。その結果、「建設が、好きだ。」というコンセプトが生まれました。
自らが「建設が好き」と発信するのは気恥ずかしいという意見もありましたが、当社だけではなく、建設業界に関わるすべての人に共通する思いなので、共感を得られると考えました。会社に諮ったところ「それでいけ」ということになりました。このコンセプトのもと、CMづくりを進めたわけです。
次に「建設が、好きだ。」をどう表現するかというステップに移りました。同じCMを20回流すわけにはいかないので、複数のCMが必要でした。社長の奥村からは企業メッセージをストレートに表現する「実直なイメージのもの」と、大阪の会社らしく「ユーモアのあるもの」という2方向でのCM制作を検討するよう指示がありました。その際、「女性などいろいろな方が活躍できるということも表現したいよね」という意見もありました。
インパクト、訴求力を高めるためには、音楽の力も借りることにしました。そこで竹原ピストルさんに書き下ろしオリジナル曲「いくぜ!いくか!いこうよ!」をCM用に提供していただきました。イメージアップにはタレントさんの力も借りようということで、女優の森川葵さんを起用し、建設業界に憧れる好奇心旺盛な新入社員「奥村くみ」というCMキャラクターを演じていただきました。建築屋さんという設定です。
女性キャラクターをメインにしたのは、「男女問わず活躍できる建設業界をアピールしたい」、「建設業界の既存のイメージを払拭したい」という思いがありました。
というような経緯を経て、「建設が、好きだ。」というコンセプトのもと、2つの方向でCMをつくりました。
1つ目が実際の社員などが登場する企業コンセプトCM「建設が、好きだ。」。もう一つが「建設LOVE 奥村くみ」シリーズCM、全4話です。自画自賛になりますが、自社はもちろん、建設業界のイメージアップにつながるものができたと自負しています。

奥村組のコンセプトCM「建設が、好きだ」。CMキャラクターの「奥村くみ」には女優の森川葵さんを起用
大阪国際女子マラソンへの協賛についても、アピールしました。産経新聞紙上で、社長の奥村と五輪メダリストの元女子マラソンランナー有森裕子さんで対談してもらいました。大会パンフレットにも対談記事が載りました。対談と通じて、なぜ奥村組がマラソンに協賛するのかなどを皆さんに理解いただきたかったからです。
そして、2018年1月のマラソン当日を迎えました。CMも流れましたし、自社ブースも盛況でした。おかげさまで、各方面から大きな反響がありましたし、もともと低かった認知度が着実にもアップしたことを自社調査で確認できました。初回としては大成功だったと考えています。
ただ、若い世代はあまりマラソン中継を見ていないので、リクルーティングに関しては課題が残っています。1年目はこんな感じです。
OBの湊です。少し前になりますが、広報課に神流川発電所と八甲田トンネルの貫通式の写真を送りました。岡田常務執行役員さんにも神流川の写真が CMに出たことを伝えました。当時、岡田さんは橋本営業所の所長をしておられました。私の自宅から営業所は近い所にあります。又、リニア新幹線の神奈川県駅の工事をしていることもあり、後輩の岡田さんとは現役時代から顔見知りでもあり、親しみやすい人柄の岡田さんがおられ良かったです。八甲田トンネルの貫通式典では、社長さん初め皆さんの写真を撮りました。それが縁で年賀状を頂きました。ブリッジの放映、私も少し出ます。直筆で書かれていました。ホノルルマラソンのこと、奈良へ転居の知らせ。こうしてお世話になった会社の情報、TVCMが観られ幸せです。会社の発展を祈っています。