匠のワザを伝承する場になってほしい
――ドイツの職人の地位が高いのはマイスター制度が整備されていることが理由ですが、それに倣ったということですか? また、匠マイスターは賃金の向上の目安にはなりますか?
泉氏 ドイツのマイスター制度に倣った点はその通りです。
匠マイスターの評価については、現段階では名誉職にとどまっています。ですが、将来的には匠マイスター認定による賃金アップも視野に入れています。先ほど申し上げた通り、協力会として検査までしっかりできるのであれば、何らかのインセンティブを支払うことを検討しているところです。
――匠マイスター制度で技能の底上げは実現した?
泉氏 そうですね。皆さん意識して取り組んでいるため、自分も技能選手権に選抜されたいという声が各地で高くなっています。
――本日、選抜されている方は、企業に雇用されている方と一人親方のどちらが多い?
泉氏 雇用されている方です。具体的には、〇〇工務店の□□班のリーダーという立ち位置で参加されている方が多いです。
――今後、どういった方に参加してほしい?
泉氏 本日の選抜者は40代が多いですが、実際の現場では高齢化が進展しており、活躍している層は50~60代の大工が中心です。10~15年もすると、大工の平均年齢は70代近くになりますから、作業の安全性、効率性などの面で懸念も生じます。
匠マイスターが培った技能を伝承していくことが、今回の技能選手権の趣旨の一つでもあります。ワザを磨いた匠マイスターが、若い建設職人に伝えていかなければ、技能はどんどん衰退します。技能を間近で見てもらって、伝承されていくことが望ましいですね。若い職人も、羨望のまなざしで匠マイスターのワザを見ているのではないでしょうか。
そのため、20代から30代前半の方に建設業界に入職してもらい、参加してもらうことで、匠のワザが伝承できれば望ましいと考えています。
――競技を見ていると、皆さん手順が違いますね。断熱材をスタートから入れる場合もあれば、他の手順を先に行っている人もいます。
泉氏 それぞれ匠マイスターが培ってきた、あるいは先輩や親方から教えられてきた手順がありますが、一番効率の良い方法で行っています。どちらから始めるというルールはありませんので、やりやすいところから取り掛かる人が多いです。
それよりも断熱材は室内の暖まった空気やエアコンで冷やした空気を外に出さない、もしくは家の外の冷気や暖気を家の中に入れない役割がありますから、隙間がないように施工することが重要で、隙間があれば当然減点対象になります。
――安全面も大きな得点になっていますが。
泉氏 工事現場で最も多い事故は墜落・転落です。脚立の天板に乗っかると大変危険なのですので禁止しており、各現場にシールで告知しています。
――将来は、外国人労働者も匠マイスターになれる可能性があるのでしょうか?
泉氏 十分あると思っています。技能の伝承も一つの課題ですが、建設業の労働人口が減少していくことは目に見えてわかっています。そこで労働不足を補うために、現在でも外国人技能実習制度を導入していますが、5年経つと帰国します。
大東建託でも2020年4月から「特定技能の支援機関」への登録を検討しています。特定技能1号で永住権を獲得していただければ、将来的にも技術力が保たれ、匠マイスターになることもありえます。
加えて、当社が開発したビス留めロボット「D-AVIS(デービス)」のような機械化により、生産性を向上し、この両輪で深刻化している職人不足時代に対処したいと考えます。
今は外国人の技能実習生や特定技能については、各協力会の工務店が雇用していますが、将来、大東建託の関連会社、たとえば「大東工務店」を創設し、雇用することもまったくないわけではありません。
全国大会の出場者5人が決定
競技が終了した後、審査に入り、採点・集計を行い、次の5名が全国大会に選抜することを決定した。

全国出場者5名が決まる。左から、山本和弘さん、板橋孝さん、宮腰識史さん、小林元さん、田中大介さん
大会の競技について、大東建託取締役 建築事業統括本部 副本部長の中上文明氏が、「競技内容にほとんど差がなく、上位5位僅差がなく誰でもベストファイブに選ばれた内容です」と総括した。
大会終了後、全国大会への出場が決まった有限会社アイムの田中大介さんに話を聞いた。
――いつ頃から大工さんになろうと思いましたか?
田中さん 子どものころからものづくりが好きで、自然と目指していました。
――いつ頃、匠マイスターに登録された?
田中さん できたばかりの頃の2年前ですね。
――今回の大会で気を付けたことは?
田中さん 断熱材入れとボート貼りに配慮しました。
――6月の全国大会では。
田中さん 出場するからには全力でやってみたいですね。

最後に田中さんと大東建託協力会八王子工事支部のみなさんで記念撮影
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