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「アナログ規制撤廃」へ。橋梁点検はどう変わる? 連載:「アナログ規制撤廃」へ。橋梁点検はどう変わる? 連載一覧へ›

人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

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公開日:2023.02.28
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3橋点検すると1橋当たりのコストは下がる?試行実証進む

――なるほど。点検精度を落とさないようなドローンと人の役割分担の概要はお話しいただいたところですが、なぜコストを下げることができるのか、教えてください。

和田会長 先ほど画像の質と精度管理の重要性、そしてこれを満足していることが点検の質を担保する大前提であることをお話ししましたが、コストにおいてもこれは大前提です。どういうことかというと、カメラの性能や照度が落ちると、カメラはピントを合わせるためにより近接して撮影します。つまり撮影枚数が膨大に増えますから、その分、撮影した写真をチェックして点検する時間も増えてしまうのです。実際に現場で人が点検する場合では、目線を左右に移動させるだけで広範囲を点検することが可能ですが、画像から点検する場合は、画像の隣の画像、その隣の画像とパソコン上で点検する必要があるため、どうしても現地より時間がかかってしまいます。

また、今の点検要領では必須とはされていませんが、今後、オルソ画像化する場合、撮影枚数によって、その費用も増えるでしょう。ドローン点検は現場での稼働時間を圧倒的に圧縮することでコスト縮減効果を生んでいるのですが、結果的にこれを上回る事務所作業となるのが実情です。なので、点検の質の意味でもコスト抑制の意味でも、画像の質と精度管理を満足することは大前提といえるのです。

剥落物が第3者被害を起こす可能性のある個所は叩き点検をすることになっているため、そうした個所に加え、桁下面、桁端部、支承回り、また重交通の都市内では構造物表面に排気ガスと埃が結構な厚さで付着している個所、鋼材部のき裂発生可能性の高い個所などは特殊高所技術での点検、コンクリート橋脚などコンクリートのフラットな面(画質と精度管理が担保できる範囲)はドローンでの点検を想定

そのうえで技術の投入手法がコストにおいて重要なノウハウになります。先ほども少しお話ししましたが、橋梁形式や橋種などによる特殊高所技術とドローンの点検範囲の分担と費用の積算、そのうえでの橋梁形式や橋種、橋長などによる最適な発注ロットなどを、発注者のかたに分かりやすく標準化ができるようにしたいと取り組んでいるところです。1橋点検するのに、ドローンも特殊高所技術も両方投入していてはコストは到底合わないです。ですが、例えばこれまで特殊高所技術で1橋点検するのに3日かかっていたとすると、先ほどお話ししたように人が近接しなければいけない対象個所に特殊高所技術をしぼって1日で3橋見ることができ、そのほかドローンに任せる個所のデータ撮影が1日で3橋できた、となると、1橋当たりの点検コストは下がりますよね。

僕らも最適解を見つけるために取り組んでいる最中で、ドローンと特殊高所技術で、例えば橋長が30mの橋梁を1日に何橋点検すれば、特殊高所技術だけ、あるいはドローンだけより安くなるのか、管理者さんにご協力いただきながら試行実証をしているところです。地方自治体さんによく見られる30mの桁橋は3橋まとめると1橋当たりの点検コストが安くなることが分かってきました。

管理者さんにしてみると、管理橋梁は橋梁形式も違えば、橋長も違うし、損傷の有無も違いますから、事例というのは本当に様々あります。そこで省令点検の進捗で管理橋梁の橋種や橋梁形式、橋長、損傷度、立地条件などをまとまったデータとしてお持ちですので、管内のどの橋梁をどういう組み合わせでどういうロットで発注するのがコストにおいて無駄がないのか、そうした判断をされるときにお役立ていただける標準化に取り組んでいます。

標準化のメリットはみんなに

――特殊高所技術×ドローンの標準化は、業務提携した個社ごとにということですか

和田会長 個社ごとというより、分野ごとですね。いま取り組んでいるのは主に2分野で、一つは先ほどからお話ししている橋梁などのインフラ点検、もう一つは国交省さんが主導している日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトのPLATEAU(プラトー)に代表される社会インフラの3Dモデル化関連です。

橋梁などのインフラ点検関連では、標準化としてお示しすることで、業務提携したドローン事業者さんだけでなく、これまでもいくつかの現場でそうしてきたように提携していないけれども協働する際にも、点検精度は落とさずにコストを下げる方法を共有できます。今後は協働が増えていくと思いますので、このメリットはすごく大きいと思うんです。ドローン事業者さんは各社ちょっとずつ考え方が違っていて、自社の強みをどこに置くかということに関連していると思うのですけれども、そこで繰り返しになるのですが、画質と精度管理が担保できる範囲をドローンでのデータ取得作業に任せる、と標準化しておけば、点検精度を落とさずにコストを下げる組み立てができますよね。

海上や谷間で足場がかけにくかったり、構造的に橋梁点検車が回り込みにくかったりするような橋梁の点検に特殊高所技術では近接できるので、活用されてきた

画質と精度管理が担保できるということは標準化に必須で、これを入れることで、今心配の声があがっているドローン点検を重ねているうちに点検精度が下がり続けるのではないかという懸念に対して、仕組みとしての歯止めとしています。

社会インフラの3Dモデル化の関連では、ドローンだけでなく多様な技術を試行されていて、橋梁の下面などはなかなか難しくて、せっかく僕らが行くんだったら、先ほどお話しした多重化の考え方で、点検にプラスして計測機器でデータを取ることができれば一石二鳥では、そんな話をしてるんですね。

人はより専門的な関与に

――橋梁などのインフラ点検の現場でもDXが進み、2巡目からは省力化、自動化の方向で取り組みがさらに加速すると、人の関与は減るように感じます

和田会長 データ取得など機械に任せられる作業においては省力化や自動化の恩恵を受けやすく、作業負担は減ると思います。一方、人に頼るところはむしろ逆で専門的な関与がより求められるでしょうね。データは機械で取得できるようになりました、AIでひび割れも見つけられます、といっても判断において人の専門性に頼らなければならない領域が残っているのが現状で、また特殊高所技術のようにそもそも人手が必要な点検個所も残っています。

先日、国交相に手交があった提言「総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~」にも、インフラメンテナンスに携わる自治体職員の方のリカレント教育や、新たな知見・知識の習得のためのリスキリングの必要性が示されています。また登録資格が満足するべき技術水準の更なる高度化の必要性も示されています。

実際に業務にあたる僕ら民間も、ロボティクスやデジタルと補完し合って作業量が減ることもある一方で、人に頼る領域では益々専門的な関与が求められ、知識や技能のアップデートはこれまで以上に必須になるでしょうね。土木という、いわばこれまでアナログで進んできた時間軸に比べ、補完し合うデジタル分野は極めて変化の速度が速いですからなおのことではないでしょうか。

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「ドローンとロープは競合ではない」 “点検範囲の明確化”で橋梁点検のスタンダードへ
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この連載について

「アナログ規制撤廃」へ。橋梁点検はどう変わる?
「アナログ規制撤廃」へ。橋梁点検はどう変わる?

人による近接目視を基本として始まった橋梁点検では近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が促進されてきた。加えて、河野太郎デジタル相が就任した昨夏8月には人による目視や常駐などを義務付ける「アナログ規制」の撤廃を2024年に前倒しすると表明している。橋梁点検の足元では何か起こっているのか。連載で探る。

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この記事を書いた人

根津 寿子
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橋の記事を中心に、公共事業の記事を書きます。読んでくださったかたに、お役立ていただける情報発信を心がけています。データサイエンスに関心があります。Master of Business Administration
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