大手足場メーカーの日綜産業株式会社(小野大社長)は、システム吊り足場の新たなスタンダードとして「New Standard Deck(ニュースタンダードデッキ、以下NSD)」を開発し、石川県加賀市の福田橋および同橋歩道橋修繕工事に初導入した。現段階で、福田橋以外にも全国で4現場の実績があり、他現場での採用の動きも加速している。
NSDは、専用の梁材・手すり材・吊チェーンと、一般材である床材・幅木などで構成される、「先行床施工式」の新システム在来吊り足場だ。その特徴は大きく4点ある。 第一に、安全性の大前提である「先行床施工式」により、吊り足場特有の墜落リスクを根本的に低減すること。第二に、工期短縮に繋がる「シンプルな組立」と「広い作業空間」を確保できること。第三に、様々な現場に対応する「自由な設計」が可能であること。そして第四に、従来の一般材を活かした「資材コストの削減」で経済性にも配慮されている点だ。
システム吊り足場への「最初の一歩」に最適な、まさに「ちょうどいい」足場を強調。大規模橋梁よりも地方自治体が発注する中小規模の公共工事への適用を図っていく方針だ。
開発にあたっては、鳶工事会社であり吊り足場施工を得意とする株式会社鉞組(岐阜県高山市、鉞勇貴社長)の意見を積極的に採用。その結果、従来の吊り足場が抱える課題を解決し、作業員の安全性と生産性向上に貢献する製品が完成した。
今回、NSDについて、日綜産業株式会社 取締役 事業本部クイックデッキ事業部事業部長の鈴木正人氏に話を聞いた。
「在来工法が7割」の背景にある”積算基準と安全性の乖離”
――率直にうかがいますが、現在の吊り足場が抱える課題は何ですか?
鈴木正人氏(以下、鈴木氏) 構造物の上部から吊り下げる形で設置する作業用足場は、いまだに在来工法が主流ですが、組立作業の際に作業員に曲芸のような動きが求められるため、事故発生率が高く、施工性も低いんです。ですから、日綜産業をはじめ同業他社も安全性の高いシステム吊り足場を開発していますが、市場全体を見渡すと在来工法が7割、システム吊り足場が3割という比率に留まっています。
――これほどまでに在来工法が普及しているのは何故なのでしょうか?
鈴木氏 在来吊り足場は昭和30年代から本格的に普及が始まりました。問題なのは、国の公共工事の積算基準が昭和30年代から変わらず「在来吊り足場」を標準としており、それ以上の価格設定が難しいという現状です。吊り足場の積算は労務費が8割、材料費が2割です。当時から鳶工事会社は自前でパイプなどの材料を購入し、組立を行っていましたが、驚くことにこの慣習がいまだに続いています。
また、国からはVFM(Value for Money:支払った金額に対する価値)の説明が求められたり、システム吊り足場のコスト計算について議論があったりと、様々な意見があります。加えて、建設現場の安全については国土交通省だけでなく厚生労働省の管轄でもあり、両省の意思統一が図られにくいことも、システム吊り足場の普及が遅れている一因です。
公共工事は税金によって行われますが、在来吊り足場が使われ続けることで、結果として税金による工事で事故が発生しているという、看過できない状況にあるのです。ですが、先日、NSDの記者発表を行った際、取材に来られた建設専門紙を中心とした12社の記者に、「実際に在来吊り足場の組立作業をご覧になったことがありますか?」と伺ったところ、どなたも見たことがありませんでした。

日綜産業株式会社 取締役 事業本部クイックデッキ事業部事業部長の鈴木正人氏
2045年には建設技能者の数が2020年の半数まで減ると予測されています。中でも基幹技能者の減少と高齢化は深刻で、日綜産業の調査では、足場作業従事者のうち在来吊り足場を組める技能者は、たった1割に過ぎません。これは、熟練作業者が若手や外国人技能者に対して、「在来吊り足場はこう組むんだ」という技能継承さえままならないことを意味しています。橋梁メンテナンスや大規模建築を中心に吊り足場の需要は今後も増加が見込まれますが、わずか1割の技能者ですべての在来吊り足場の組立・解体を賄うことは、もはや現実的ではありません。
この課題を解決するには、「安価で安全な吊り足場」へ切り替えなければ何も始まらない、というのがメーカーとしての強い想いです。つまり、在来吊り足場からシステム吊り足場への切替えを進めなければ、橋梁をはじめ日本の社会インフラを守れないという危機感があります。こうした膠着状態を打開するために開発したのが、「New Standard Deck(NSD)」なんです。






良い記事だと思います!
ただもう少し文章は要約して削れるはずです…。