オーバースペックを排して、市町村工事にも「ちょうどいい」
――現場の細かな安全対策についてはどう配慮されていますか?
鈴木氏 人の墜落・転落防止はもちろんですが、モノの飛来・落下防止も重要です。そのためには足場の隙間を無くすことが求められます。吊り足場内部での塗装・素地調整作業では、塗料などの飛散防止のためシート養生が必須になります。そこで、釘や木ビス、タッカーなどで養生シートを容易に固定できるよう、オプションとして「フロアスペーサー」を用意し対処しています。
ブラスト現場では、橋梁などの鋼構造物に圧縮空気で研削材を吹き付け、古い塗膜やサビを除去します。その際、大量の粉じんや破片が発生するため、これらを外部に漏らさないよう周囲を完全に覆う必要があります。しかし、鉄部には釘が打てません。そこで、ところどころに木の板を挟み込み、釘を打てるような配慮を施して利便性を向上させました。 基本積載荷重は120~150kg/㎡。これは市町村レベルの公共工事において、まさに「ちょうどいい」値です。

NSDでは支柱を差し込む部材として、オプションとしてポストロックを用意
――そうした機能性と、150kg/㎡という積載荷重を踏まえると、どのような現場がターゲットになるのでしょうか。
鈴木氏 NSDの基本積載荷重では、極端に重たいものは載せられません。しかし、石川県加賀市の福田橋のような橋梁修繕工事では、NSDを導入することで、早く安全に工事を推進することが可能です。オーバースペックになりすぎず、かといって工事に不安を与えない。「ちょうどいい」をコンセプトとして提示している点に、大きな意味があると考えています。

福田橋のような中小規模橋梁に導入が期待される
例えば、東京都内には高度経済成長期に建設された歩道橋が数多くあります。下を車両が通行するため足場を下げることができず、厚みのあるクイックデッキでは導入が困難でした。しかし、NSDであれば採用可能です。こうした小規模橋梁工事において、採用のメリットは非常に大きいと言えます。
「作り手」と「組み手」の共創。”卓越した鳶職”鉞組が開発参画
――NSDの開発期間について教えてください。
鈴木氏 クイックデッキを発表したのが10年前、クイックデッキライトが約4年前です。クイックデッキは日本になかった「システム吊り足場」を導入した最高峰の商品ですが、当時から、いずれはライトな(軽量・簡易な)吊り足場もカバーしなければならないという構想はありました。価格と性能でカテゴライズされるべきだと考えていたのです。そこで約3年前にNSDの開発に着手し、今回の発表に至りました。

本格的に現場実装されているクイックデッキ
――クイックデッキからNSDに至るまで、大きなストーリーがあるように感じます。
鈴木氏 まず「吊り足場のあるべき姿」として最高峰のクイックデッキを発表し、業界の慣例打破に挑みました。しかし、多くの鳶工事会社はいきなりクイックデッキに乗り換えることは難しい。「足場板を2万枚持っているのに、それを捨ててシステムに乗り換えるのは厳しい」という経営者の声もありました。 在来吊り足場からシステム吊り足場への移行は必要ですが、既存の資産(機材)を持つ企業の事情も理解できます。そこで、システム吊り足場の「入り口」としてNSDを使っていただく。お手持ちの機材を活用しながらシステム化のメリットを享受できる、まさに「ちょうどいい」着地点を目指しました。
――開発に当たっては、岐阜県高山市に本社を置く、株式会社鉞組がアドバイザー的な存在だと伺いました。
鈴木氏 鉞組は吊り足場をはじめ、様々な仮設足場の設置に大きな実績をお持ちです。われわれ日綜産業はメーカーであり、鳶工事会社ではありません。そこで、「どうすれば組みやすいシステム吊り足場になるか」についてアドバイスをいただき、鳶工事会社目線での貴重な提言をNSDの開発に反映させました。
製品開発において理想なのは、「作り手」と「組み手」の双方が「いい商品だ」と評価している状態です。メーカーが「最高の商品です」とPRしても、鳶工事会社が「組みづらい、危ない」と感じれば、それは良い商品とは言えません。組み手が安全かつスムーズに、快適に組める足場こそが望ましいのです。早く組めれば鳶工事会社にとっても「この現場が終わったから次の現場へ」と回転率が上がり、利益拡大につながります。製品の性能と労務の評価が合致して初めて、足場の正しい評価が定まるのです。
日綜産業の工場内のような制約のない場所では問題なく組めても、現場は違います。鉞組は日本最高峰レベルで在来吊り足場を組んでおり、クイックデッキの導入実績も豊富です。日本のあらゆる吊り足場を知り尽くした彼らの知見と経験、つまり「鳶工事会社のフィルター」を通すことが、より良いシステム吊り足場の完成には不可欠でした。
日綜産業と鉞組の関係は深く、現在は資本提携を締結しています。お互いが資本を持ち合うことで、作り手と組み手の意見を有効活用し、共に成長しています。鉞組にとっても使いやすい機材があれば発展につながりますし、日綜産業としても最高峰の目線を通して良い機材を開発できる。双方にメリットがある関係です。
――鉞組はNSDについてどのような評価をされていますか。
鈴木氏 「システム吊り足場には良い点も悪い点もある」というご意見です。日綜産業はクイックデッキを最高峰と位置付けていますが、現場によってはすべてをシステム吊り足場で組むとなかなか仕事が終わらないケースもあります。橋梁の形状は様々で、システム吊り足場がうまく架からない場所では、在来の単管で収める手法が必要になるからです。鳶職人の目線では、すべて専用パーツで収めなければならないフルシステムには、ある種の「息苦しさ」もあるようです。
その点、NSDは通常のパイプが接続でき、現場での組み換えが可能です。鳶職人から見れば「これまでの応用で組める」という安心感があります。現在、鉞組の鉞社長をはじめ、多くの鳶職人の方々がNSDに触れ、組み方やアレンジの仕方、細かい部分についてSNSを通して写真でアップしてくださっています。 クイックデッキは「完璧な商品」としてリリースしましたが、NSDは「基本の骨組み」を日綜産業が提供し、鳶職人が手持ちの機材を織り交ぜて完成させる商品です。作り手と組み手が一緒になって創り上げていくシステム吊り足場として、これからの発展性に大いに期待しています。





良い記事だと思います!
ただもう少し文章は要約して削れるはずです…。