現場管理者の現場管理術「ほっこりコミュニケーション」
さて、この現場の施工チームは仕事の精度が高く、正直「任せっきり」でも問題ないレベルでした。しかし、腕のいい掘削機のオペレーターはプライドが高く、仲間と反りが合わないところもありました。施工チーム内での揉め事も何度かありました。このような施工チーム内で意見の対立が起きた時は、現場監督が調整すれば良いのですが、日頃から施工チームに馬鹿にされている現場管理者Aでは収拾がつきません。
そこで、管理の補佐的な立場にいた私が意見調整の役目を負わされていたわけです。とはいっても、私が特別なことをしていたわけではありません。直接作業に手出しすることはせず、なるべく側にいて作業状況を見ているだけ。時折、タイミングを見計らって声をかけるくらいです。指示ではなく、「作業手順を確認する」という感じで声がけをしていました。
休憩時間は、なるべく一緒に過ごすように心がけました。会話は世間話が主でしたが、仕事の話題になった時は、彼らの意見や要望、愚痴の聞き役に徹します。話に耳を傾けていると、ちょっとした瞬間に彼らの本音が垣間見えるのです。それぞれにプライドを持っている反面、強いコンプレックスもある。そのコンプレックスが、時として反抗心を生む要因になるのだと感じました。
立場や役職がどうであれ、信頼していない現場管理者の指示は空虚な響きしかなく、つい反抗したくなるのでしょう。こちらが無理に聞き出そうとしても、人は簡単に本音を語ろうとはしません。しかし同じ目線で交わす会話だと、本人が気づかないうちにポロリと本音が出たりするものです。そして、その人となりも見えてきます。
肩の力を抜いて取り留めのない会話をすることで、自然体のコミュニケーションがとれるようになってきます。そこで初めて、本来の「ホウ・レン・ソウ」が機能するわけです。それが私流の「ほっこりコミュニケーション」。休憩時間も現場管理者にとっては腕の見せどころです。