作業手順をめぐって施工チームがケンカ状態
ある時、杭打ちの作業手順をめぐって、施工チーム内でオペレーターと職工が大揉めしたことがありました。意見のぶつかり合いを超えて、もうケンカ状態。まず私は、双方の言い分をじっくり聞きました。その結果、オペレーターの意見に整合性があると判断し、その手順で作業をすることにしたのです。職工たちは不満気味でしたが、これはオペレーターの指示ではなく、現場管理者である私の指示だから従うように、あえて語気を強めました。
職工たちは現場管理者の指示なら仕方がないと言いながら、渋々従ってくれましたが、実は職工たちの根っこには、オペレーターから偉そうに指示されるのが嫌だという気分があったのです。大揉めの原因は、プライドのぶつかり合いということだったわけです。結果としてオペレーターが提案した作業手順が正解で、渋々だった職工たちも、その作業手順が適切だったことを潔く認めました。
もし私がオペレーターの案に従うようにと指示していたら、職工たちは納得しなかったでしょう。渋々でも彼らが納得したのは、現場管理者である私の指示だったからです。オペレーターの作業案に私自身が納得し、その整合性を私の口から説明したこと。そして、オペレーターの見識を評価し、職工たちの高い作業精度を信頼していると伝えたことがポイントだったのです。
現場管理者は上から目線じゃダメ
プライドが高い人間ほど、自分が評価され信頼されていることに喜びを感じるものです。でもそれは、その場だけ、口先だけではダメで、日々のコミュニケーションがあるからこそ伝わります。私は作業が終わった後でオペレーターに「さすがだね」と声をかけ、職工たちに「ありがとう、ご苦労様」と感謝を伝えました。
それからというもの、プライドの高いオペレーターも、まるで別人になった感じで、積極的に相談してくるようになり、素直に私の意見を聞き入れてくれるようになりました。チーム内でリーダー的な存在に成長し、仲間内で揉めることもなく、仕事の精度がより向上しました。
どういう言い方で何を伝えるか、それ次第で相手の受け取り方が変わってきます。 愚痴や言い訳は嫌われ、評価を落としますが、根拠を示した整合性のある言葉は、現場管理者としての信頼関係を構築するために欠かせません。たまには「ヨイショ」も必要ですが、基本は本音で語らないと工事現場での信頼は構築できません。
現場で上から目線で指示するだけでは本来の意図は伝わらず、品質の高い仕事は期待できない。仕事場のコミュニケーションの目的は、仲良しになることではありません。相手を知った上で配慮すると共に、自分の役割と意思を明確に伝えることです。現場で上から目線で指示するだけでも、任せきりでもダメ。慣れ合いで仲良しになるのではなく、必要な時には毅然とした態度で物を言う。
監視するのではなく、注意深く目を配り周囲の話に耳を傾ける。そんな、当たり前のことを人間臭く自然体ですることが、現場管理者にとっては大切なのではないでしょうか。