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建設業界を変える歴史的な政策、「建設企業間の労働力の融通」も

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公開日:2017.08.25 / 最終更新日:2017.11.07
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「適正な工期設定等のためのガイドライン」の内容は?

気になるのは、「適正な工期設定等のためのガイドライン」の内容だ。「適正な工期設定等のためのガイドライン」は、公共・民間工事問わず、すべての建設工事で適正な工期設定が行われるための環境整備の一環として作成する。方向性としては、「建設業働き方改革に関する関係省庁連絡会議」で議論した5点が網羅される方向で検討が進められている。

「今までは、何があっても工期厳守ありきでした。しかし、設計図書と現場の状況が一致しないなど多くの作業が必要になった場合には、受発注者が協議し、工期の変更も柔軟にするような内容も盛り込む方向で検討しています」(菅原企画官)

これは元下関係も同様だ。

「建設企業は4~6月に余裕がある一方、繁忙期が集中します。それゆえに繁忙期に長時間労働が発生する要因となっています。その改善に向けて、公共工事だけではなく、民間工事でも平準化を推進します」(菅原企画官)

一見ゼネコン側に有利なガイドラインとみられるが、問題は簡単ではない。特に社会保険の法定福利費や安全衛生経費の取り扱いについては注意が必要になる。都内の専門工事業者はこう語る。

「ゼネコンは専門工事業者が提出した見積りの中で、法定福利費や安全衛生経費の削減を行うか、あるいは、これらの経費は削減しなくても、人件費などを削減してきた。これによって、われわれ専門工事業者が受け取る金額は、まったく変わらない状態が長く続いて来ました。このガイドラインができることによって、我々専門工事業者の国に対する要望も大きく前進したと受け止めています」(都内専門工事業者)

さらに、ICT施工をはじめとする生産性向上も重要な課題だ。大手ゼネコンは、すでにICT施工の技術を保有しているが、問題は地域建設企業だ。ICT化による工期の短縮や品質、安全性の向上、プレキャスト製品の活用など地域建設企業にとっては重い宿題を課せられた格好だ。

これまで人海戦術に頼ってきた地域建設企業には、ICT技術の取得は遅れを取っている現状がある。

「ICT施工については困っています。東京都内にはICT施工を行う現場もなく、技術の蓄積に問題があります。それに規模が小さいゼネコンは技術者の数が少ないので、生産性向上について得意な技術者を養成する必要があります。しかし、これは都内だけではなく、地域建設企業全体の問題として受け止めています。早いうちからICT施工技術の習得が求められます」(都内の地域建設企業トップ)

建設技能労働者の囲い込みのため社員化も

一方、建設業が週休2日制になると、日給月給で働く建設技能労働者の手取り収入が減少する問題も、かねてより言及されてきた。

「手取りが減少しないよう、対策が必要になってきます。工事を平準化する動きとあわせて、建設技能労働者の社員化、月給制が必要になってくると思います」(菅原企画官)

実は、建設技能労働者の社員化は水面下で進んでいる。

「弊社では建設技能労働者を全員社員化しました。人口動態から見れば、人手不足になるのは明らかになので、先手を打って若い人材を囲い込むことからこの考えに至りました。賃金や手取りが減るという反対意見もありましたが、社会保険も含め最終的にはこれだけ得になるというシミュレーショングラフをつくり、わかりやすく説明したところ、みなさん納得しました」(群馬県の専門工事業会社)

今は過渡期であり、社員化の可否については、専門工事業界も二極化を余儀なくされていくだろう。

現行の建設生産システムは限界。今こそ「働き方改革」を

現行の建設生産システムであれば、人口動態を考えればいつか限界が来る可能性がある。だからこそ「働き方改革」が建設業界にとって必要なのだ。

今後、建設業界は、働き方改革により、「週休2日制確保」「工事の平準化」「ICT施工などの生産性向上」「法定福利費及び安全衛生経費の確保」「専門工事業者における建設技能労働者の社員化」「書類の簡素化」などが進むことになる。その第一歩が「適正な工期設定等のためのガイドライン」の策定と、普及徹底である。

しかし、これはあくまで国としての方向性であり、施工管理技士や建設技能労働者などの人材確保については、個々の企業が努力をして実施しなければならない。国が「建設業の働き方はこのように変わります」とアピールしても実施するのは個々の企業の努力による。

ここが建設業の大きなターニングポイントとある。従来通りの働き方を強いる建設企業であれば、人材は別の建設会社に転職することが増えていくだろう。つまり人材の流動化が進むことになる。今後、人材が集まる会社とまったく集まらない会社に二極化されることが予想される。

野上内閣官房副長官は同協議会の席上で、「新国立競技場建設現場において長時間労働による過酷な状況の中、若者が命を絶つという痛ましい事案が発生した。このような悲劇を二度と繰り返さないという強い決意で長時間労働是正に取組んでまいる所存」と決意表明した。これは国の強い意志の表れであると、真剣に建設業界は受け止めなければならない。

野上内閣官房副長官談話や官民あげての「働き方改革」を、各建設企業がどのように受け止めるかが、今後の建設企業における担い手確保・育成の生命線だ。今後の建設企業の存続を決める各社の「働き方改革」に注目したい。

次のページ『建設産業政策2017+10』で明かされた10年後の建設業界

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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コメント(2)

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  • - 2018/11/17 11:55

    働き方だけではいけない。
    建設業の受注に問題がある。
    建設業界の実に7割強が赤字である。
    粉飾で利益が出ているようにしているだけ。
    理由は融資なくては成り立たない建設業は粉飾しなければ即座に資金繰りがショートしてしまうからである。
    赤字覚悟での受注に意味があるのか?
    予算も工期もなしでなり立つはずはない。
    追加は金が出ないことが多い上に他の現場でと言われるがオバケよりも出ない。
    会社規模ではなく何年赤字に耐えられるかが建設業の考えのようだからです
    単価が上がることなく社会保険が義務化され
    結局のところ下請け泣かせ。
    たまに調査が入るが大手だけで末端まで調べることはない。
    コンプライアンス違反がどれだけ居ても成り立つ建設業は変わらない。いや、変われないのでは?

    返信する 通報する
  • - 2019/09/27 17:35

    この記事から2年経ち、来年にはオリンピックが開催されると言うのに状況は何も変わって無い。
    オリンピック期間中の首都圏では工事ストップになりここ数年の人手不足でかき集められた外国人労働者が職を失い巷に溢れ治安は悪くなるだろうが、国やゼネコンからは何のお達しも無い。

    都合の悪い事は下請企業に任せっ放し。

    いったいどこがスピーディなんだか…

    せめて国がテコ入れして最低限の労務費単価ぐらいは支払いさせないと来年辺りから働き盛りの職人が居なくなって廃業する中小企業が出て来るだろう。

    職人1人が育つのに何年かかると思ってるんだか分からないが、仮に10年後に労働環境が良くなっていたとしても本当に仕事が出来る技能者はもう居ないだろう

    返信する 通報する

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