『建設産業政策2017+10』で明かされた10年後の建設業界
そしてもう1つ大きな動きは、「建設産業政策会議」(座長:石原邦夫・東京海上日動火災保険相談役)が2017年6月30日で閉会し、『建設産業政策2017+10』を取りまとめたことだ。
建設業界は、劇的な進展を遂げるAI、IoTなどのイノベーション、確実に到来する労働力人口の減少といった事態を正面から受け止める必要がある。この「建設産業政策会議」では、10年後でも建設産業が生産性を高めながら「現場力」を維持できるよう、法制度をはじめ建設産業関連制度の基本的な枠組みについて検討を行った。
「建設産業は雇用の受け皿としての役割も果たしてきました。しかし、各建設企業の取り組みだけで十分に担い手を確保できていた時代は終わりを告げました。若者に夢や希望を与えることができる建設産業でありつづけるには、個々の企業の一層の取り組みに加え、全体的な施策が必要です。『建設産業政策2017+10』は、若者に明日の建設産業を示したものです」(菅原企画官)
『建設産業政策2017+10』で示された内容は次の通りだ。
- 業界内外の連携による働き方改革
- 〇建設業従事者の継続的な処遇改善(賃金等)
建設キャリアアップシステムの活用 - 〇適正な工期設定、週休2日に向けた環境整備
- 〇働く人を大切にする業界・企業であることを見える化
専門工事企業の評価制度の創設
建設企業が雇用する技能労働者の育成の責務
許可に際しての労働者福祉の観点の強化
人材育成体制の強化
- 〇建設業従事者の継続的な処遇改善(賃金等)
- 地域力の強化
- 〇地域貢献に取組む企業の評価(防災・建機保有等)
- 〇市町村が主体となり、建設産業の振興・発展をはかる仕組み
業界内外の連携による生産性向上 - 〇各プロセスにおけるICT化、手戻り・手持ちの防止
- 〇施工に従事する者の配置・活用の最適化
- 多様な主体との連携による良質な建設サービスの提供
- 〇安心して発注できる環境の整備
- 〇施工の品質に直結する設計や工場製品の質の向上
この施策を1つずつ実行に移し、10年後の建設産業にかかわる各種の制度インフラを再構築していきます。これから2~3年の間に、現行法令の改正、約款改正、通達、指導、ガイドラインの策定など実施すべきことは数多くありますが、1つ1つ着実にスピード感をもって実行していきます」(菅原企画官)
専門工事企業の評価制度の創設など「光」あてる
『建設産業政策2017+10』で特に重視されたのは、専門工事業界及び建設技能労働者だ。これまで評価対象でなかった「専門工事企業の評価制度の創設」や「建設業許可に際しての労働者福祉の観点の強化」「技能労働者の位置づけの明確化」をうたっている。
この点はかねてより専門工事業界から不満の声があった。
「われわれ専門工事業者が技術、安全、品質、技能者の教育に邁進しても、ゼネコンからはもっと安くして欲しいという値切りの要請が強い。一生懸命やった専門工事業者が正当に評価して欲しいという願いはかねてから強かったのですが、今回、大きく前進したと思います」(都内専門工事業者)
「単なる価格や実績だけで専門工事業者を評価するのではなく、所属する技能労働者の技術力、施工実績なども見える化し、建設キャリアアップシステムとも連動していく方向で検討を進めていくことになる。しっかりとした教育体制や、技術、品質、安全等が正当に評価され、ゼネコンが専門工事業者を選定する際に役立てて欲しいです。専門工事業者に光をあてるというのが大事な視点です」(菅原企画官)
この動きはゼネコンにとっても大きな注目点である。
一部のゼネコンでは「安値の専門工事業者は良い専門工事業者」という風潮があり、技能の研鑽を図っても、これを認めなければ、「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざの通り、まじめな専門工事業者は休廃業する可能性がある。そうなれば将来の建設技能労働者の担い手育成に禍根を残すことになる。そうした危機感の表れが専門工事会社の評価制度の創設につながったとも言える。
そのため、今後、ゼネコンが専門工事業者を選定する際、単に価格だけはなく、「現場力」や社会保険加入状況などを総合的に検討する必要が出てきた。この施策は、良い建設構造物を建設するのはゼネコンだけではなく、専門工事業者の「現場力」もあわせた総合力が必要だ、ということを国の意思でしっかりと決めたとも言える。
「建設企業間の労働力の融通」という歴史的な政策も
『建設産業政策2017+10』の「地域力の強化」も注目である。地域建設企業は、「地域の守り手」であり、その防災力は東日本大震災でもいかんなく発揮されている。しかし、地域の公共工事の減少に伴い、その防災力も衰退している地域もある。これはまさに地域の危機とも言える状況にある。
「防災活動や建機を保有しているなど、地域貢献を行っている地域建設企業に対しては、経審で加点する施策を行います。さらに、市町村が主体となり、地域建設産業の振興・発展を図る仕組みを検討していきます」(菅原企画官)
また、ゼネコン関係に関しては、設計から施工に至るまでのBIM・CIM等の適用範囲の拡大、工場製品に起因して建設生産物に不具合が生じた場合の再発防止のほか、東日本大震災の被災地で多く活用されたCM方式の制度化も大きなニュースだ。
しかしなによりも驚いたことは、「企業間における人材の効率的な活用」が一文に入っていたことだ。
「ある工事をA社が受注し、B社が受注できないケースですと、A社は忙しくなりますが、B社は暇になります。そこでA社の工事をB社が応援するような仕組み作りを考えても良いのではないかと思っています。発注時期の平準化だけではなく、労働力を平準化することにより、受注できた企業とできなかった企業の繁閑の差がなくなり、長時間労働も減るのではないかと考えています。これは国土交通省だけではなく厚生労働省とも連携して今後検討していきます」(菅原企画官)
『建設産業政策2017+10』は早くも具体的に動き出している。
「7月25日での中央建設業審議会(会長・石原邦夫東京海上日動火災保険相談役)の総会に「社会性等(W点)ボトムの撤廃」「防災活動への貢献の状況の加点幅の拡大」「建設機械の保有状況の加点方法の見直し」という経審における3点の改正(案)を提示、了承されました」(菅原企画官)
変化に対応できる建設企業が生き残る
建設産業政策会議は『建設産業政策2017+10』をまとめたことで閉会した。その『建設産業政策2017+10』の終わりの言葉は、「建設産業政策会議自体は今回で会を閉じることとなるが、行政においては、これが「終わり」ではなく「はじまり」であることを肝に銘じて、提言された建設産業政策をスピード感を持って着実に実施・具体化していくことを要請する」というものだった。
『建設産業政策2017+10』のポイントは、「専門工事業者に光をあてたこと」「地域建設企業の地域力向上」「BIM・CIM・CM方式の拡大、制度化」「労働力の平準化」などだ。これに「働き方改革」を加えることにより、建設業界はどのように変化していくだろうか。
『建設産業政策2017+10』と「働き方改革」により、建設業は短期間に大きく変化するだろう。建設業界はこれらの施策をいち早く導入した各個別の企業が生き残る。国土交通省土地・建設産業局建設業課の菅原晋也建設業政策企画官のインタビューを通じて強くそれを感じた。
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働き方だけではいけない。
建設業の受注に問題がある。
建設業界の実に7割強が赤字である。
粉飾で利益が出ているようにしているだけ。
理由は融資なくては成り立たない建設業は粉飾しなければ即座に資金繰りがショートしてしまうからである。
赤字覚悟での受注に意味があるのか?
予算も工期もなしでなり立つはずはない。
追加は金が出ないことが多い上に他の現場でと言われるがオバケよりも出ない。
会社規模ではなく何年赤字に耐えられるかが建設業の考えのようだからです
単価が上がることなく社会保険が義務化され
結局のところ下請け泣かせ。
たまに調査が入るが大手だけで末端まで調べることはない。
コンプライアンス違反がどれだけ居ても成り立つ建設業は変わらない。いや、変われないのでは?
この記事から2年経ち、来年にはオリンピックが開催されると言うのに状況は何も変わって無い。
オリンピック期間中の首都圏では工事ストップになりここ数年の人手不足でかき集められた外国人労働者が職を失い巷に溢れ治安は悪くなるだろうが、国やゼネコンからは何のお達しも無い。
都合の悪い事は下請企業に任せっ放し。
いったいどこがスピーディなんだか…
せめて国がテコ入れして最低限の労務費単価ぐらいは支払いさせないと来年辺りから働き盛りの職人が居なくなって廃業する中小企業が出て来るだろう。
職人1人が育つのに何年かかると思ってるんだか分からないが、仮に10年後に労働環境が良くなっていたとしても本当に仕事が出来る技能者はもう居ないだろう