作業員をイメージできる「施工図」
施工しやすい施工図を作成するために、もうひとつ大切なことがあります。特に、サッシ図や金物の図面などの専門業者が作成してきた製作図をチェックする場合に気を付けるポイントです。
それは、「下地の状態を考える」ということです。どのような下地にどのように取付けて、その施工性は良いのか?という感じで、図面の中に「作業員さん」を登場させるのです。
図面上で、作業員さんが実際に作業をしている所をイメージできれば、 「この金物のビス止めの向きは横からの方が施工しやすいし品質的にも良いな」などのイメージが出来てきます。このように施工の順を追って施工図が見えてくると、施工図チェックのレベルが劇的に上がり、何よりも施工図のチェックが「面白く」なっていきます。
施工の流れを意識した「施工図チェック」
しかし、現実は「このクリアランスでアルミサッシは何とか溶接できるけど、アルミの額縁はどうやって溶接固定するの?」というような納まりで施工図を完成させる人が後を絶ちません。では、どのような取り組み方を行えば良いかと言うと、やっぱり図面の中で施工をイメージすることが大切なのですが、「流れを逆に考える」というやり方も効果的であると感じます。
たとえば、直交する壁の近くで、軽量鉄骨の下地の一般壁に鋼製建具を取り付ける場合を考えてみましょう。まず鋼製建具を取り付けるためには、「溶接しろ」が必要です。溶接しろは大抵20~25mm程度確保します。そして、ひとつ前の工程に戻ると、鋼製建具を溶接するための軽量鉄骨にはライトゲージが設置されていないといけません。さらに、ライトゲージは、スタッドと抱き合わせて使用するため、壁の厚さにもよりますが、75mm程度以上の「壁」が必要です。
仮に、鋼製建具の周辺の直交する壁が、コンクリートの壁であれば、そこに溶接すれば良いので問題ありません。しかし、耐火遮音壁のように一般壁より先行して仕上がる溶接出来ない壁の場合には、先程の20+75mm程度の「小壁」を造るのが正解です。
「あれっ、さっきは小壁がないほうがキレイって言ってたのに」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、この内容をお伝えするために、あえて言葉足らずにしました。正確には「理由のない小壁は必要ない」です。何事にも必要な場合と、不必要な場合があるのです。
施工上の納まりとして絶対に必要な寸法
今回私が一番お伝えしたかったのは、「納まりに込める想い」です。ただ単に、設計図通りの寸法だからというのではなく、「この寸法は○○という施工上の納まりとして絶対に必要な寸法なのです」と胸を張って設計事務所に提案することが、より良い建物を造っていくためには必要不可欠であるということ。これを私は数々の失敗から学んできました。皆さんの参考になれば非常に嬉しいです。
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