中小建設企業、工務店が大淘汰の時代を迎える根拠
「特に中小・零細の建設企業において今後大きなリスクとなるのが、社長の高齢化と人手不足です。現存する中小・零細企業のなかには、現在の社長が創業者となり、取引先も開拓し、経理・財務も管理してきたという会社がまだ数多く存在しています。しかし、そうした社長一人ですべてを担う経営環境下にあるからこそ、社長が亡くなったり倒れたりすると、その時点で事業継続が困難になってしまうのです。
人手不足については、たとえ受注はできたとしても、建設技能労働者などの人手を確保できないケースの増加も懸念され、建設業の二大リスクは今後も続くでしょう」(阿部氏)
帝国データバンクは「2017年 後継者問題に関する企業の実態調査」と題した調査を実施し、その結果を公表している。後継者不在率が最も高い業種はサービス業で、その比率は71.8%となった。建設業の71.2%がそれに続き、上位2業種の後継者不在率は7割超となっている。
「大手ゼネコンも人手不足(下請け業者の確保)の問題を抱える中で、しっかりと後継者を育てて事業を継がせれば、たとえ規模は小さくても受注は継続的、安定的に得られるのではないでしょうか」(阿部氏)
しかし、後継者確保は簡単ではない。妥当な線を言えば、社長の息子や娘婿が継げば問題はないが、親族も後継者になりたがらないケースが増えている。
ここで阿部氏が提示した40歳~80歳までの全業種の社長年齢層の図は驚くべきものであった。
「団塊の世代と呼ばれる68歳~70歳の社長数が突出していますが、その息子や娘さんは大学を卒業して親の後を継ぐことなくサラリーマンになる人が多いようです。本来の年齢分布図から見れば、40歳なかば(第二次ベビーブーム世代)の社長が増えても不思議ではありませんが、そうした傾向は全く見られず、なだらかに減少しています」(阿部氏)
「約10年後には、現在の団塊の世代の社長が平均寿命に達し、死去したり働けなくなるケースが急増することは間違いないでしょう。それまでに後継者が現れたり、事業を売却できればいいのですが、そうしたケースはごくわずかでしょう。つまり、相当数の倒産や廃業が発生することは自然な流れとも言えるのです」と阿部氏は警笛を鳴らす。